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『ニノ…宮殿にも…ついて来てくれますか?』

「当たり前だろ…俺はもう決めたんだ。キミが…好きだから…キミが一人で抱えて来た事の半分は俺が抱える。キミが大切だからだよ。…だから約束してよ。」

『約…束?』

「キミも…俺の側から離れないで」

『ニノ…』

「あぁもう!また泣くっ!泣いちゃダメだよっ!あと一仕事残ってんだから!さぁ…行こう!ボスの所へ」

『…はい。…ニノ…約束します。ずっと…ずっと一緒です!』

はにかんだ笑顔で首を傾ける。

俺の大好きな仕草を乱用するんだからなぁ…まったく。

俺達は宮殿までしっかり手を繋いで歩いた。

辺りにはもう雪が見当たらない。

平らな段差の低い階段を登り、高音の鐘の音が響き、中に入れば高いのか低いのか訳がわからなくなる異空間に包まれる。

何度来てもこの流れには慣れない。

足を踏ん張ると強い風が吹き付け、高い階段の向こうに相変わらず趣味の悪い椅子に座ったボスがニヤリと笑って俺たちを待っていた。

「何だ…文句があったのか?」

手紙の最後に、不満があれば宮殿に来いと書かれていたのを思い出す。

俺と相葉くんは片膝を突き、腕を胸元に引き寄せ首を垂れた。

『とんでもありませんっ!ボスっ!今回の事っ…何とお礼を申し上げたら…』

相葉くんが唇を噛み締めている。

「…相葉ちゃんは真面目過ぎるからなぁ。シャンティのボスに誠意を見せていたのは当然だし仕方のない話だ。だけど…アレだアレっ、ニノが来たんだから!なっ!ニノっ!」

なんとも大雑把に話を振られて下げていた頭を上げると、途端にまたあの直接心に話しかけられる手法で身体の中で声がする。

「相葉ちゃんが他の男と寝てるのは、おまえにはキツいよなぁ~」

胸元に引き寄せていた手を拳にして握りしめる。

「俺はお前が気に入ってる。相葉ちゃんを裏切って、俺の番いにならないか?そうすりゃ、払ってやった借金は二人分チャラにしてやっても構わない。悪くない話だぜ?」

心に響く言葉に、俺はキッと顔を上げて、ボスを睨みつけた。

「俺の番いは相葉くんですっ!俺は彼の為に働きますっ!これからもずっと!変わらずにっ!」

隣りの相葉くんがポカンと俺を見つめる。

ボスの声が聞こえていない相葉くんは、一方的に俺が喋りだしたと思っているに違いない。

「俺は…相葉くんが…好きなんです。」

俺の言葉を聞いて、ボスが何故かニヤリと笑った。

「…もういい。少し揶揄っただけだ」

『揶揄った?…ニノ?』

相葉くんが意味が分からないという風に俺に向かって眉間に皺を寄せる。

その時、バサバサっとボスの両翼が大きく開いた。

「相葉ちゃんっ!お前もうじき誕生日じゃなかったか?」

大きな翼のおかげですっかり影になった俺達は真っ暗で表情の見えないボスを見上げた。

『は、はい…24日に下界でいうなら23になります』

「今までで最高の贈り物は何だ」

俺は相葉くんの過去を知っているだけに思わず跪いている膝に掛けた手に力がこもった。

案の定、相葉くんは暫く黙り、小さく切ない掠れるような声で呟いた。

『特に…頂いた事はありません』

ズキンと胸が痛む。

「贈り物を貰った事は?」

『…ありません。』

「一度も?」

『…はい』

「ただの一度もか?」

執拗な質問に、過去の悲しみを素手で掻き混ぜるような気分の悪さを覚えた俺は顔を上げてボスに声をあげた。

「ボスっ!!もうよして下さいっ!今そんな事聞いても仕方ないでしょっ!」

バサッとボスの大きな両翼が仰がれ、強風が吹き付ける。

尻もちをついた俺と相葉くんは眩しい光を背負うボスを目を細めながら見上げた。

ボスは瞬きの一瞬で俺たちの眼前に現れる。

手には二枚の大きな大きな白と黒の羽根。

相葉くんの顔面ギリギリに近づくと、溶けそうな柔らかい表情で微笑み、二枚の羽根を差し出した。

『ボス…コレは…』

「誕生日プレゼントさ。俺の羽根だ。これでハゲたら責任取ってくれよ?」

相葉くんはボスの指先から羽根を二枚受け取る。

尻もちを突いたままの俺達は状況が読めなかった。

「俺の可愛い仲間が誕生日なんだろ?プレゼントの一つや二つ、ボスがやってもバチは当たらないだろう。」

『ぇ…えぇ、勿論ですが…羽根…ありがとうございます…』

相葉くんは礼儀正しく礼を言いながらも、ちんぷんかんぷんといった表情だ。

「ソイツはあくまでも誕生日プレゼントだ。混血の羽根は希少品でな。いつだったか、相葉ちゃんが悪魔に刺された時、翔くんから聞いたろ?俺には悪魔の血が混ざってる。それはこの世界では禁忌に違い存在。俺でさえ、ここ数百年は混血を見てねぇしな。ま、ソレ、シャンティに持って行ってみな。きっとおもしれぇぞ。」

ボスは顎髭を撫でながら悪戯っ子のようにキヒヒと笑った。

著者

ninon

オリジナルの小説を書いていきます。 嵐さんの大ファンです。 黄色を愛でる幸せに生きています。 二宮和也Addiction... どうぞよろしくお願いいたします。 尚、このブログ作品はフィクションであり、実在する人物、団体等とは一切関係ございません。

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