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「入るぞっ!」

櫻井さんの言葉に我に返ったように頷いた。

背の高い男はツンツン立たせた髪が特徴的で、黒い大きな鞄から滅菌されたパウチに入った専門的な器具を取り出してテキパキと何やら準備している。

『櫻井さん…この人…』

「あぁ…医者だよ。裏方のな」

櫻井さんの呟きに、視線を俺に向けたその男は鞄から名刺を取り出して俺に突きつけた。

「松岡だ。滝沢からの頼みだからな、まけといてやるが、俺は高いぞ。今度は覚悟しとけよ」

名刺にある松岡昌宏という文字を睨みつけながら、”今度”という言葉に下唇を噛んだ。

ヨコがポンと肩を叩いてくる。

目を合わせると、居心地悪そうな表情のまま苦笑いした。

「点滴吊るすから何でも良い、ハンガーラックみてぇなのねぇか?」

松岡さんの指示に、俺とヨコ、櫻井さんは辺りをキョロキョロして、リビングの隅に置かれたポールハンガーを運んだ。

何本かの注射を打ち、点滴を繋ぎ、パックリ開いた傷を器用に縫合して行く。

なかなか見ていられない光景に目を逸らした。

そんな中

「何だこりゃ…」

櫻井さんがキッチンの棚を見て眉根を寄せる。

ヨコが近づき、うわっ!と驚いた声を上げた。

二人と目を合わせ、俺は肩を竦めながら呟く。

『亡霊の仕業…すね…』

櫻井さんはパチンと額に手を当てて溜息を吐く。

ヨコは俯いてしまった。

病んだ二宮さんの心がジワジワと広がった室内。 

静かに治療が続いた。

投稿者

ninon

オリジナルの小説を書いていきます。 嵐さんの大ファンです。 黄色を愛でる幸せに生きています。 二宮和也Addiction... どうぞよろしくお願いいたします。 尚、このブログ作品はフィクションであり、実在する人物、団体等とは一切関係ございません。

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