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『そんな薄着で…風邪ひくって何回言わせるんですか』

横抱きに抱えあげ、寝室に入る。

「相葉さん…」

『何ですか?』

ベッドに下ろした二宮さんはくるんと毛布を引き寄せながら背中を向けた。

それから暫くして、くぐもった声で呟く。

「…引っ越そうかな…」

俺はその一言に一瞬息を呑んだ。

その猫背に丸まった愛おしい背中に近づいて、襟足に口づける。

『そうですね…一緒に住むには…俺には家賃が高すぎる』

俺の言葉に二宮さんがガバッと振り返り起き上がった。

『くふふ…なんです、その顔』

二宮さんは普段からウルウルの瞳を更に潤ませ、唇を噛んで俺を見つめた。

その瞳には他の誰でもない俺が居る。

ニッコリ微笑んで呟いた。

『一緒に…暮らして下さい。』

二宮さんは一瞬目を見開き、慌てた様子でバフッと毛布に包まって、また背中を向ける。

『二宮さん…聞いてますか?』

「うっ…うるさいなぁ…聞いてるよっ!」

『じゃあ…返事してください』

丸まった背中がゆっくりこちらに向くと、耳まで真っ赤にした二宮さんが恥ずかしそうに言った。

「飼い主だからねっ!いっ一緒に住んでやらない事もないよっ!」

俺は二宮さんを毛布ごと抱きしめた。

足を絡ませて身動き取れないくらいギュッと引き寄せ額に口づける。

『…夢じゃないと良いんだけど…覚めたら…俺、生きていけないです』

暫く動かなかった彼は、胸元でクスクス笑い出す。

顎を引いて見下ろすと、俺を見上げた二宮さんが笑いを噛み殺すように言った。

「ふふ…夢じゃないと良いね…相葉さんには…生きててもらわなきゃ」

俺は二宮さんを見て目を細めた。

『大丈夫です。俺はあなたを置いて死んだりしない。…あなたより1秒でも長生きしますからね…もう絶対、一人にしない。』

あなたが、絶望の中で子猫に語りかけていた姿を思い出す。

生きたくない思いに苦しみながら、それでも本当は生きていたくて、生にしがみついていたんですね…

雨がシトシト降っていて、立ち尽くす俺に気付いて、ゆっくり立ち上がった二宮さんは、ポケットに両手を入れたまま猫背の姿勢で静かに笑い、そのまま店の裏口から中へ消えてしまったっけ…。

あの表情が、俺の中にストンと落ちて、心を満たした。

「嘘つきは嫌いだよ?」

『嘘が付ける程、器用に生きてませんよ。』

「…ップハ…アハハ!違いない!器用に生きてる奴が、俺なんか気にかけない…本当、相葉さんはおバカだねぇ」

『どうとでも言ってください。俺は生きて来てこんな幸せな時間は今まで味わった事がありませんから。…二宮さんが居れば良い…好きです。』

「……俺も…相葉さんが好きだよ…」

世界に二人きりみたいな白い毛布の中。

抱きしめた体温がお互いに移り合い、混ざる。

投稿者

ninon

オリジナルの小説を書いていきます。 嵐さんの大ファンです。 黄色を愛でる幸せに生きています。 二宮和也Addiction... どうぞよろしくお願いいたします。 尚、このブログ作品はフィクションであり、実在する人物、団体等とは一切関係ございません。

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