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引っ越しの朝、隣りに眠っていた二宮さんの姿が無くて慌てて飛び起きた。

一番にバルコニーに目がいって、彼を見つける。

ゆらゆらタバコの紫煙を揺らして、手すりに頰を寝かせ白い息を吐いて見せる。

ゆっくり近づいて声をかけた。

『俺も吸って良いですか』

二宮さんは微笑んで

「おいで」

と言った。

二人で並んでタバコを吸う。

ゆらゆら 最後の 弔いタバコ。

白い月が薄っすら見えた。

二宮さんを覗き込んで、顔を傾け視線が絡んで…キスをする。

『好きです…大好きです』

「んふふ…知ってるよ。冷えるな…中、入ろう」

二宮さんが俺の肩を抱いた。

リビングに無造作に転がった毛布を拾い上げ、二宮さんを包んで抱き寄せる。

『あったかくなったら…花見に行きましょう。…それから、暑くなったら、夏祭りとか行って…涼しくなってきたら、美味いもん食いに温泉とか行って…また…雪が降るようになったら…ここに花を手向けに』

「雪が降るようになったら…ここへは来ない。」

二宮さんは俺の話に割って入る。

『え?』

俺は驚いた顔をしてしまう。二宮さんはクスっと笑って肩を竦め、俺の髪を撫でた。

「昨日、雅にはさよなら言ったんだ。もう、ここには来ない。いつか、もっともっと整理がついたら、墓参りぐらいは行ってやるって。その時は、相葉さん、ちゃんと付き合ってね。」

俺は一瞬唖然として、言葉の意味を理解した途端、ツンとする鼻の痛みを堪えて頷いた。

「泣きそうなの?もぉ~泣き虫だなぁ~」

二宮さんはクスクス笑う。

綺麗な琥珀色の瞳が、涙を溜めて揺れていたのを誤魔化すように…。

『なっ泣いてませんっ!さっ!着替えて準備しましょう!』

その時…その時が来るまで、俺は側に居られる…その意味をなぞるだけで、涙が込み上げる。

「はいは~い」

二宮さんはダルそうに頭の後ろで腕を組みながら着替えにいった。

その後ろ姿を見て、俺は思っていた。

なんて事ない日常を

この人にあげたい。

なんて事ない日常で良いんだ。

二宮さんが

笑ってくれるような…

なんて事ない日常を。

投稿者

ninon

オリジナルの小説を書いていきます。 嵐さんの大ファンです。 黄色を愛でる幸せに生きています。 二宮和也Addiction... どうぞよろしくお願いいたします。 尚、このブログ作品はフィクションであり、実在する人物、団体等とは一切関係ございません。

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