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ガラガラッと扉を開けて中に足を踏み込む。

思っていた以上の緊張。ゆっくりと後手で扉を閉めた。

冬空が机に座り俺を見つめている。

「職員室…行くんじゃねぇの?」

「声が震えてる」

図星をさされて、カッと頭に血が昇る。

「馬鹿にしてんのかよっ!俺はっ!」

冬空は両手を広げた。

「…俺は?何だよ」

驚くほど綺麗な顔で優しく微笑みかけてくる。

まるで意地悪な魔法使いだ。

足が勝手にジリジリ近づいてしまう。

きっと俺の意思なんてお構いなしに、強引な魔法がかけられていて…だから俺は…だから…。

言い訳だとすぐに気がついた。

俺は多分…いや、確実に、自分の足で、自分の意思で…

冬空が開いた腕の中へゆっくり、ゆっくり、ゆっくり入る。

「俺は…自分が分からない」

グズっと涙ぐみ、冬空の肩に手をかける。

「朝の立番の時だって…冬空、青葉に連れて行かれる俺を一度も見なかった。…もう飽きたんだと思ったら…頭ん中がぐちゃぐちゃになって…」

冬空は俺の腰に手を掛け見上げてくる。

寒い雪景色が見える灰色の瞳の中に、ぼんやりと俺を映し、金色の髪がサラサラと流れる。

俺は冬空の肩にかけていた手をゆっくり頬に移した。

両手で彼の顔を挟む。

ジッと見つめ合っていたら、冬空が優しく笑うから、俺は額をコツンと重ねた。

「キスしてくれないのかよ」

冬空はクスクス笑いながら呟く。

「…安くねぇんだよ」

強がったけど…本当は目の前の唇に…

触れたいと思ってる。

「じゃ、俺は安くていいわ」

冬空は俺の頬に手をかけて髪を撫でる。

首の後ろを包むように引き寄せられて、傾いた顔が近づき、唇が重なった。

「ン…んぅっ…はっ…」

甘く深い香り。

もう止められなかった。

青葉の顔が浮かんだけど…目の前の冬空が気持ち良さそうに俺の髪や頬、首を撫でてキスするもんだから、何もかもどうでも良くなりそうだった。

「冬空っ…んぅっ…まっ…待てって…ンッ…」

唇や首筋にキスの雨を降らす冬空を止めるようにもがいた。

このままじゃ学校だという事を忘れそうになる。

簡単に腰に回った腕が少し離れた身体を元通りのポジションに引き戻す。

「秋空…好きだよ」

「俺は…俺は冬空の事…何も知らない」

「俺も秋空の全部は知らないよ」

「だからっ!簡単に好きとかっ!ゔっ…」

冬空は急に俺の顎を乱暴にグイと引き上げた。

「お前さ、本気で言ってる?簡単な訳ないだろ?俺は教師で、お前は生徒だっ…しかもお互い男で、世間的に言えばまだまだマイノリティなグループだ!そこで生まれるのは偏見!差別だよっ!俺が怖くないと思ってるとでも言うのか?冗談じゃないっ…リスクは誰だって背負いたくない!だけどっ!!」

「冬空…」

「俺はお前に一目惚れだった。自分でも妙だと思った。だけど…好きなんだ。簡単じゃないっ…簡単なんかじゃないって…どうやったら伝わるんだよ…」

冬空は椅子から立ち上がり俺を優しく抱きしめた。

「…好きだよ」

俺は冬空を見上げて苦笑いした。

「弱ってる冬空は…新鮮だ…」

「性格悪いぞ」

「ハハ…ごめん…」

そう言って…俺は冬空に”好き”と言う言葉を返さず…

背伸びをして

キスをした。

投稿者

ninon

オリジナルの小説を書いていきます。 嵐さんの大ファンです。 黄色を愛でる幸せに生きています。 二宮和也Addiction... どうぞよろしくお願いいたします。 尚、このブログ作品はフィクションであり、実在する人物、団体等とは一切関係ございません。

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