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使われていない教室を時間差で抜け出し、チャイムが鳴る手前で席についた。

青葉は一瞬こっちを見たけど、どちらかというと素っ気ない態度に近い雰囲気で俺から目を逸らした。

博士は分厚い辞書から目が離せないようで、俺の中身がない訴えるような視線には気づかなかった。

冬空に触れていた身体が甘い香りを放つ。

多分…もう、青葉には隠せない。

俺はさっきまで冬空が触れていた唇を指先でそっと撫でた。

熱い気がして何となく身体が疼いて、膝を擦り寄せてしまう。

自分だけが溺れそうな蒸せる愛しい香りに、思わず口を塞ぎ立ち上がってしまった。

「どうした?斉藤」

先生が俺を見る。

クラスメイトも同様にして俺に注目した。

「す、すみません、気分悪いんで…保健室に」

「お~ヤバそうだな、誰か付き添いを」

「だっ大丈夫ですっ!!一人で行けます」

ガタンと椅子が鳴った拍子に、青葉が席を立ち上がりかけた。

「大丈夫っ!大丈夫です!一人で…」

独り言のように声を出すと、青葉は渋々席についた。

教室を出て、少し熱くなった身体を廊下の壁に滑らせる。

「何だょ…こんな…」

力なく呟き、顔を手で覆った。

ずっと続く廊下の向こうから足音がする。

俺はゆっくり顔を上げた。

「ハハ…冗談みたいだな…」

少女漫画とかの王子様は、多分このタイミングで現れるんだろ?

見てくれだけじゃないってのかよ。

本当、もう引き返せない。

「…秋空っ」

慌てた声、駆けてくる足音、肩を抱く大きな手と…甘い誘惑の香り。

俺は冬空のスーツにしがみついた。

「授業中だろ?こんなとこでどうした?顔、赤いぞ」

「あんたが…」

「秋空?」

「あんたが悪いっ!!あんたが俺を好きだとか言うからっ!!簡単じゃないとか言うからっ!!」

そう言い終わると冬空は俺の身体をキツく抱きしめた。

「冬空…誰か来たら」

「クビだな…」

彼はそう言って苦笑いすると、少し震えた指先で頬に触れ

静かな廊下で、キスをした。

投稿者

ninon

オリジナルの小説を書いていきます。 嵐さんの大ファンです。 黄色を愛でる幸せに生きています。 二宮和也Addiction... どうぞよろしくお願いいたします。 尚、このブログ作品はフィクションであり、実在する人物、団体等とは一切関係ございません。

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