72
「だったら…それを寺崎に言わなくちゃな」
冬空にギュッと抱きしめられ、小さく頷いた。
「寺崎はずっとおまえを見てきたんだ。きっと気づいてる。だから、少しずつおまえから離れようとしてるんだな…秋空はそれが嫌なんだろ?…まぁ、俺はそのまま離れちまえと思わなくはないが」
「冬空っ…」
「ハハ…嘘だよ。毎回こんなグズられてちゃ、嫉妬で俺のメンタルがもたねぇよ」
「しっ…嫉妬?」
冬空は俺の髪を撫でながら優しい声で囁いた。
「そ…嫉妬だよ」
耳たぶを甘噛みされ、舌先が首筋を這う。
ゾクゾクと這い上がってくる快感の波に身体が強張った。
言葉でさえも、俺を刺激してくる。
冬空が嫉妬だなんて、女子が聞いたら卒倒もんだ。
「と、冬空っ!…ちょっ…くすぐったいっ」
向き合って抱き合う冬空の大きく長い指の手のひらが制服のシャツの中に入ってくる。
「背中…ツルツル…気持ちいい」
冬空の吐息が鎖骨にかかり、温かい舌が骨をなぞった。
「ンッ!…っ冬空っ」
「秋空…」
顔を上げた冬空の表情は完全に雄の色をしている。
食われる
そんな尋常じゃない感覚に下半身が反応していた。
怖い
怖いのに…
俺は多分…
「しても…いいよ」
声にしたら、冬空がギュッと唇を噛んで、俺を抱き上げ呟いた。
「悪いがもう…逃がさないぞ」
返事の代わりに、冬空の首に腕を回し抱きついた。