74

泣いた理由が知りたい。

俺と身体を繋げたのに、最後にあんな風に泣いた冬空が気にかかった。

俺は冬空を知らなさ過ぎる。

冬空が吸うタバコの紫煙がユラユラ天井に向かう。

俺はベッドに仰向けのまま呟いた。

「なんで?…」

上半身裸の冬空がタバコをサイドテーブルの灰皿に置き、シャツを羽織った。

指先にタバコを戻して、トントンと灰を落とす。

「何がだ?」

「何で…泣いたの?」

冬空はビックリした顔をしてから、クシャっと困ったように笑った。

タバコを一息吸って吐き出す。それからゆっくり喋り出した。

「大事なもんが…ちゃんと腕の中にあるってさ…幸せだったから…あぁ、違うか…ふふ、秋空の泣き虫が移ったかな」

「すぐそうやって茶化す!俺は真剣に聞いてんだよっ」

ちょっと怒り気味に話す俺の額にかかった髪を撫で上げてくる冬空。

「ハハ、悪い…そんなつもりじゃないんだけどな…おまえが聞いても気持ち良い話じゃないぞ…アメリカに居た頃の話だ」

冬空は自分の指先のタバコから立ち昇る煙をボンヤリ見つめた。

瞳がさっきまでの熱を冷ましていくのが分かる。

冷たい雪景色を連想させるグレーのビー玉。

冬空はたまに人形なんじゃないかと思うような表情をする。正気も、感情も感じない。

俺はベッドに座る冬空の背中をそっと抱きしめた。

「辛い事が…あったのか?」

問いかけると、振り向いた冬空は思い出したかのような苦笑いを浮かべ、俺の前髪を撫で上げた。

「俺が住んでたのは随分と田舎でね。ただっ広いトウモロコシ畑しかなかったよ。治安はさほど悪くもなくて…夜に外を歩けないなんて事はなかった。」

背中に耳を当てながら冬空の声に耳を傾けた。

「俺は、日本から留学で来ていた母が父に惚れて付き合って出来た子で、それなりに幸せに暮らしていたんだ。まだ俺は小さかった。学校から帰ったら、母さんの返事が無くて…キッチンにはホールのケーキがあって…そこに銃が埋まってた…俺は不思議に思ったよ。その銃は父さんが家族に万が一があった時にって、用意してた護身用の銃で…ちょっと触ろうとしたら物凄く叱られたのを覚えてる。父さんの銃だと分かってたせいか、生クリーム塗れの拳銃を不審にも思わなかった。それくらい、俺はまだ子供だった。その日は俺の誕生日で…母さんの手作りのケーキだったんだと思う。乱暴に刺さった銃は、俺がいつも触りたがっていたせいか…喜ぶと思ってデコレーションされたんだと、ダイニングテーブルの椅子に飛び乗ったら…テーブルの向こう側が見えて…驚いて声が出なかった。」

「冬空…」

冬空はタバコをグシャッと灰皿に押し込み、前髪に指を埋め俯いた。

投稿者

ninon

オリジナルの小説を書いていきます。 嵐さんの大ファンです。 黄色を愛でる幸せに生きています。 二宮和也Addiction... どうぞよろしくお願いいたします。 尚、このブログ作品はフィクションであり、実在する人物、団体等とは一切関係ございません。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です