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クラスメイトも、潤くんも居なくなった教室。

机に突っ伏して、軽く陽が沈むのを待っていた。

先生…もう仕事…終わったかな…。

俺は席を立ち、鞄を肩に担いだ。

廊下は暗くて、途中、用務員のおじさんとすれ違った。

さようならって丁寧に頭を下げられて、何となく居心地が悪かった。

そそくさと校舎を出て、下駄箱で上靴とローファーを入れ替えようと靴に手を掛けた。

後ろから伸びる影…。

気配を感じて振りかえると、そこには相葉先生が立っていた。

『校舎から出てくるのが見えたから…』

「…まだ仕事終わらないですか?」

『終わったよ…車…乗って帰れよ』

「えっ…」

相葉先生がコテンと首を傾げて

『嫌か?』

なんて言うから、余裕のない俺は焦っていた。

「ヤじゃないっ」

『くふふ…じゃあ、靴履き替えたら、裏門に来い。車つけとくから。』

「は、はいっ」

相葉先生は白衣を翻して職員室の方へ消えて行った。

その後ろ姿さえ、独占してしまいたい感情が…沸騰する。

相葉先生が好き。

もう…ただそれだけ。

俺は少し足早に裏門へ向かった。

そこに着いた頃には、相葉先生らしき人影が乗った車が見えた。

側に駆け寄ると、中に乗った先生が運転席から助手席のドアを開けた。

俺は中を覗き、

「お邪魔します」

と遠慮がちに呟いた。

車内は、先生の香水とタバコの香り。

ハンドルを握りながらタバコを咥える彼がカッコ良かった。

「先生…タバコ値上がりしたのに…やめないの?」

『あぁ?…独身貴族が今更そんなとこケチって何か得でもあるのか?』

「分かんないけど…健康になるかもよ」

『くふふ…健康?そうだなぁ病気したいわけじゃないけど…俺は別に長生きもしたくないからね』

前を向いて苦笑いする先生。

先生が本気になったあの写真の男が浮かんで…許せなかった。

「長生きしてください…俺よりうんとおじさんなんだから」

俺は窓枠に頬杖を突いて流れる景色を睨みながら呟いた。

『…何だよ…おじさんて』

「そのまんまです。」

返事はなかった。

代わりに、車は軽くブレーキがかかり停車する。

マンション駐車場入り口のチェーンが下がり、車がそこに乗り上げた。

ハンドル操作が上手くて、また大人を感じさせられながら、アッサリ駐車スペースにおさまった車から相葉先生が降りていく。

俺は慌てて助手席から降りて後を追った。

「先生っ…ちょっと待って下さい」

『おまえさ…可愛いな』

慌てて駆け寄った俺の額を人差し指で弾いた。

「いっ…て…」

また先々に行ってしまう先生の背中を小走りに追いかけた。

著者

ninon

オリジナルの小説を書いていきます。 嵐さんの大ファンです。 黄色を愛でる幸せに生きています。 二宮和也Addiction... どうぞよろしくお願いいたします。 尚、このブログ作品はフィクションであり、実在する人物、団体等とは一切関係ございません。

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