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先生の家の玄関前、鍵を差し込む指先を見つめていた。

もう、きっと何をしていても愛おしい。

開いた玄関。

中へ入る時、先生が俺の手を引いた。

躊躇している俺を知ってだろうか…。もしそうだとしたら、男前にも程がある。

ローファーを脱いで顔を上げると、先生が優しく笑って手を繋いでくれた。

耳まで真っ赤になってしまう。

広いリビングの茶色いソファーに促され座った。

『コーヒー飲むか?』

「…要らない」

そう呟き隣に座る先生に抱きついた。

『二宮…』

「先生は…どんな目に遭ったの?…どんな風に…傷ついたの?」

先生は溜息を吐いて俺の頭を抱きしめ、そのままソファーに倒れ込んだ。

仰向けになった先生の上に、俺が乗っかった状態。

『何でそんな事を気にする?…聞いてどうする』

「…傷を…塞ぐんだよ」

俺は先生の首筋に顔を埋めてギュッとしがみついた。

『くふふ…生意気だなぁ…』

「好きなくせに…」

強気で居ないと、足元から崩れそうだった。

『…昔々あるところに』

「ふざけないでよ」

『バーカ…ふざけてないよ。保健の先生と生徒が居ました。生徒は保健の先生を好きだと言い、毎日アタックします。先生は…誤ってそれを受け入れてしまい…生徒の毒牙にかかります。…先生は……』

首筋に顔を埋めていた俺は、先生が黙るのを変に感じ、手を突いて顔を覗き込んだ。

腕で目元を隠し、先生は、小さく震えていた。

俺は、そっと唇にキスをする。

「先生…好きだよ」

『ふ…ふふ…二の舞だ…俺は簡単にお前に恋をして…あんな思い…二度としたくないのに…』

腕で隠した先生の目元から涙が耳に向かって流れる。

「あんな…思い…」

『どこからともなく…噂は流れた。生徒が、俺にそそのかされたんだと…俺に犯されたんだとうそぶいた…。ふれ回った。俺は…代わりなんか居ない程…補えない程…アイツを愛していた。裏切りは…一度俺を殺したよ。…だけど…それだけじゃ済まなかった。アイツはリーダーシップを取り、俺にあらゆる嫌がらせを始めた。幼稚なものから、社会生活を奪いかねないものまで…だから…だったら、そうなってやろうって…思ったんだよ。』

先生の涙は鈍い輝きを放つ黒い瞳から流れ落ちては湧き上がった。

あぁ…なんて涙を流すんだよ…腹ワタが…煮えくり変える

『俺は沢山の生徒を犯した。きちんと、噂通りの工程で写真やビデオを回し、非道に努めた。そうしたら…フフ…いつのまにか、こっち側の人間が増えて来た…』

「こっち側…」

俺はピクンと反応して、呟いた。

『あぁ…こっち側だよ。先生、遊びましょうって犯して下さいって…おかしなもんだよな…無茶苦茶にしてやろうってのに…そういうのが楽な奴が集まり始める…俺は何も…復讐出来てなかったんだよ…ただ、こっち側の人間に歓迎されて、なんなら弄ばれ続けてたのは俺かも知れない。だけど…』

「やめられなかった?…悪を…演じてる自分を…」

先生は黙り込んで俺をソファーに沈めた。

『演じる?…あぁ…そうだな…俺は結局…演じていた。少しも非道な悪人教師じゃなかった!アイツにっ!何もっ!何もっ……』

ポタポタと

先生の涙が降ってくる

苦しそうに眉間に皺を寄せて…キツく閉じた瞳から

ポタポタと

先生の涙が降ってきて

俺は

「許せない」と

呟いた。

著者

ninon

オリジナルの小説を書いていきます。 嵐さんの大ファンです。 黄色を愛でる幸せに生きています。 二宮和也Addiction... どうぞよろしくお願いいたします。 尚、このブログ作品はフィクションであり、実在する人物、団体等とは一切関係ございません。

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