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masaki’s Book

「チッ…」

うわっ!今…舌打ちされた?

『ご、ごめんなさい。』

「ぁあ?んだよっ!マジで邪魔…どいてくんない?」

『すっすみません!』

俺は中途半端に並んだスーパーのレジの列から外れた。

少しクセのある黒髪の男が目の前を陣取る。

俺はスーパーのカゴを胸元で下げたまま固まった。

昔からすぐに謝ってしまう。

昔からすぐ…泣いてしまう。

俺はあまり、強くない。

というか、平和主義者なんだ。

うんうんと1人頷いてカゴを持つ手に力を込めた。

平和主義者の何が悪いってんだ!

俺はレジの列にちょっと割り込まれたくらいじゃ怒んないんだからね!

そう!それが俺の良いところなんだ!

強気に頭の中で持論を繰り返しながら自分の買い物カゴの中身がレジに通されるのをみていた。

支払いが終わって、袋詰めをしていたその時だ。

ガサッと袋にレモンが放り込まれてビックリして隣りを振り返る。

『あっ!あのっ!!』

「あ?なんか文句あんの?」

『ぃ…いや…そ、その…』

レジの前に割り込んだ黒髪の男が2回目のしゃくるような「ぁあ?」を俺に向けて吐き捨てるもんだから、肩を縮めて身体を後ろに引いた。

『れ、レモン…俺の袋に入っちゃいましたよ?』

俺は袋の取手を両手で持つと、袋を開いて見せた。

男は真顔で

「入ったんじゃないわ!入れたの!さっき、レジ譲ってくれたお礼。ちょっと嫌な事あって…当たっちゃって悪かったよ。それお詫び」

俺は開いた袋の中で、玉ねぎに混じって転がるレモンを覗き見た。

それから隣に立つ男を見つめ

『れ、レモン…ですか?』

「…何?文句あんの?」

『ぁっあのっ!いやっ!ないです!ないっ!あっありがとうございます!』

なんでだよぉ~何でレモンなんだぁ~!

俺は頭がパニックになりながらも、凄みのある彼にきょどってしまい、袋の取手を合わせて閉じた。

「本当、悪かったよ。じゃあ」

さっきまでの険しく怖い顔から一変、彼は透き通るようなブラウンの瞳を黒髪の隙間から覗かせ、苦笑いすると軽く手を上げ自動ドアに進んで行く。

俺はあまりに突然の出来事でその場から動けなかった。

視線は彼の小さな背中を見つめたまま。颯爽と立ち去る猫背のサンダル男…。

何故だか手探りで、ロールのビニール袋を引きちぎる。

ふわっと風を取り込み開いたら、スーパーの袋の中を覗いて、黄色いレモンを手に取った。

暫く見つめて、風を取り込んで開いたビニール袋にソレを収める。

袋の口を捻って縛って、スーパーの袋にそっと戻し、呟いた。

『レモン…何に使おう』

投稿者

ninon

オリジナルの小説を書いていきます。 嵐さんの大ファンです。 黄色を愛でる幸せに生きています。 二宮和也Addiction... どうぞよろしくお願いいたします。 尚、このブログ作品はフィクションであり、実在する人物、団体等とは一切関係ございません。

2件のコメント

  1. 優しい…❗️イイ子だねレモンって、、

    arashi6181211
    1. ね笑笑!舌打ちしたくせにレモンって

      ninon

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