52
masaki’s Book
辺りを走って一通り探してはみた。
息が切れて、喉がギリッと痛む。
膝に手を突いて屈み息を整え、もう一度真っ直ぐに立って周りを見渡した。
『ハァ…くっそぉ…ハァ…マジかょ…やらかしてんなぁ、俺』
髪をグシャと掴んで肩を落とした。
電話も出ない。この辺りにも居ない。
行き違いを心配して探してたけど、あの人、人混み嫌いだろうし、もう帰ってるんじゃ…。
走り去るバス
駅のホームに滑り込む電車
…違う
タクシー!!
俺は慌てて歩道から身を乗り出し手を上げた。
駅近だったおかげで、タクシーは列をなして止まってくれる。
行き先を告げて乗り込む。
俺が悪い
俺が悪いんだ!
きっと傷つけた。
冷静になればなる程、さっきまでの流れがスローモーションみたいに繰り返し頭を駆け巡る。
ドクドクと不安に鳴る胸が痛くてギュッとシャツを握った。
手を離した事
友達だと嘘をついた事
それは俺の弱さだった事
ほんの少しの気遣いのなさが、あなたを傷つけたんなら、俺は最っ低に酷い奴だ。
タクシーは渋滞にハマって中々前に進まない。
ジワジワ迫る焦りから、携帯を何度も鳴らした。
だけど、一向に出る気配がなくてかければかけるほど怖くなった。