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masaki’s Book

タクシーの運転手は道が混んでるせいか、仕切りにつまらない話を振ってくる。

二宮さんの事で頭がいっぱいの俺は遂に痺れを切らせてタクシーを降りた。

そこからはもう持久戦。

こんなに走ったのは、高校のマラソン大会が最後だったはず。

やっとの思いで二宮さんのマンションまでやってきた。

汗だくだし、達成感なのかなぁ、涙まで出て来ちゃったよ。

グズグズしながらインターホンを押した。

シンと空気が鳴るような静けさだ。

でも、奥で電気が付いてるのが分かる。

中に居るのは間違いないんだ。

ドンドン 

扉を拳で鳴らしてみる。

扉に耳を押し当てて様子を伺ってみた。

何の音もしない。

電気付けっぱなしで本当は居ないのかな…。

『二宮さん…居るなら出て来て…話がしたいんだ』

扉に両手を突いて額を預ける。

『さっきはごめんなさい。俺…人目とかにビビっちゃって…本当、ごめんなさい』

扉の向こうから足音がする。

ドンドン床を踏み鳴らして、玄関扉がバンッと勢いよく開いた。

「おまえにもう、用はない。更に言うなら謝って貰わなくて結構だ!さっさと彼女んとこに行っちまえよ!これ以上惨めな気持ちになりたくないんでねっ!」

罵声を浴びせるように怒鳴りつけられて玄関扉は閉まってしまう。

俺はヨロッと身体が揺らめいて、フラフラ後ずさった。

それから、言われた事を頭の中で反復する。 

“用はない?彼女?惨め?”

出た答えが一つだけ。

俺はバンッと玄関扉に張り付いた。

ドンドンドンッ!

ドンドンドンッ!

『二宮さんっ!誤解ですっ!!ちゃんと俺の話っ!聞いて下さいっ!二宮さんっ!!」

ドンドンドンッ!

ドンッ!

パシッと振り上げた手首を後ろから掴まれた。

「あなた、先生のストーカーか何かですか?警察!通報しますよ?」

俺の手首をギリッと握った色白の女性は反対の手で携帯の画面をまるで警察手帳でも見せるかのように突きつけた。

『へっ?!あっ!あぁっ!ちっ!違いますっ!あのっ!あ!俺っ!二宮さんのっ!そのっ!怪しい者じゃ!』

彼女はパッと手首を離して眉間に皺を寄せ俺の顔をズイと覗き込んできた。

「あなた…もしかして、先生の…」

ニヤッと笑うもんだから肩を竦めて両手を胸元でヒラヒラさせた。

「彼氏さん?」

『あぁ…えっと…はぃ…』

「きゃぁ~んっ♡イケメンじゃないですか私、吉高由里子って言います!あ!先生の編集担当ですっ!うんっ!良いっ!背もっ!」

俺をまっすぐ立たせて自分と手を使って比べ

「完璧な身長差!スタイル良いですねぇ~!少女漫画に出て来そう!先生良い物件持ってたんじゃなぁ~い!で?」

一頻り騒いだ彼女は真顔で俺の鼻頭を指さした。

『で?…と申されますと?』

「いやいや!こっちが聞いてんでしょうが!何で彼氏の家の玄関前で騒いでるんですか?これじゃあ通報されても仕方ないですよ?」

俺は彼女に言われ頭を掻いた。

『ぃ…いやぁ、それが…』

「ハッキリしない男ね?何よ?」

俺は引き攣った苦笑いをして彼女に答えた。

『喧嘩してしまって…誤解を解きたくて…』

吉高さんはビックリしたみたいにわざとらしく両の手の平で口を塞いで目を丸くして見せる。

「まさに修羅場ってヤツの真っ最中なわけですねっ!どうしよう!高ぶるぅ!!」

『あの、高ぶらないでくださいよぉ~、こっちは一大事なんですからね』

「一大事っ!はぁぁ~っ!」

この人、ミュージカルの舞台役者かよ…

よよよぉ~としなって倒れそうなポーズだけして、また立ち直ると俺にニッコリ微笑みかけた。

「こんなイケメンに一大事なんて言わせる先生っ!やっぱり小悪魔ね!よしっ!ここは私が協力しましょう!」

『えっ!本当ですか?!』

「えぇ!だって、絶対面白いじゃないですか!」

『ぁ…ハァ…そんなに、面白くはないですけど…。』

何なんだこの人…

勢い半端ないなぁ…。

ピンポンピンポンピンポンピンポンピンポン

『ちょ!ちょちょ!吉高さん!』

肩を落としてる間にこの人と来たら人んちのチャイム何だと思ってんだよ!

あんたこそ通報されるぞ!

吉高さんは真顔で俺に振り返る。

「何です?」

『いや!だからそんな連打したら』

「あぁ…これ?」

吉高さんは指先を確認すると、今度は格闘ゲームでもしてるみたいに超連打を始めた。

ピピピピピピピピピンポンっ!ピピ

後ろに立つ俺はパチンと顔を手の平で押さえて目を逸らしてしまう。

「だぁっ!!るせぇっ!!!吉高さんっ!ベル壊れんだろっ!!…ってお前ら…いつからグルになった」

吉高さんは二宮さんが出てくる寸前でインターホンのチャイムボタンに俺の指先を掴んで押さえつけていた。

「先生、この方よっぽど大事なお話があるんじゃないかしら?」

ぶりっ子な上目遣いでパチパチ瞬きして身体を左右に揺すりながら全部俺のせいにされてしまった。

あざとい…いや、違うだろ!これは違う!何か違うぞ!

「外じゃなんですよ、先生。」

吉高さんは二宮さんを押し退けて中に入る。俺は袖を乱暴に掴まれ、吉高さんに引き摺られるようにして中に入った。

著者

ninon

オリジナルの小説を書いていきます。 嵐さんの大ファンです。 黄色を愛でる幸せに生きています。 二宮和也Addiction... どうぞよろしくお願いいたします。 尚、このブログ作品はフィクションであり、実在する人物、団体等とは一切関係ございません。

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