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nino’s Book

無自覚の角砂糖…か。

俺は自分がそんな魅力的な男だと思った事は一度もない。

毎日スーパーと部屋の往復くらいなもんで、人と話すなんて、せいぜい吉高さんと、編集部に顔を出した時に社内に居る社員と挨拶を交わす程度だ。

雅紀に舌打ちなんて無礼を働いて、レモンなんかでどうにかなると思ったちっぽけな男だ。

なのに、おかしい。

雅紀に言われたら、俺は実は凄く魅力的な何かなんじゃないかと思えてくる。

今まで付き合ってきたどの人にも感じなかった、居心地の良さ。

寂しさがすり減って、縋りたくなる恐怖を感じる愛情。

もう一人は嫌だと、知らぬ間に求める身体。

雅紀には

そんな俺を知らないで欲しい。

恥ずかしくて…

いたたまれない。

「もう遅いし、泊まっていくだろ?」

雅紀がソファーで俺の膝枕されながらウトウトし始めるもんだから問いかけた。

そうしたら、途端に飛び起きて頭を掻いた。

『いやぁ、明日も仕事だし、スーツじゃないから今日は帰ります。』

「そ、そっか」

立ち上がる雅紀を見上げてから、フイと視線を逸らせた。

『和?』

「…ぇ…あ、あぁ、うん、そうだよな、うん。」

俯いた俺の目の前が暗くなる。

雅紀がソファーに座って項垂れる俺をそっと抱きしめたせいだ。

「な、なんだよ」

『くふふ…いいえ、何でもありません。ただ、離れたくないなぁって…思ったんで、今充電してます』

「?…充電?これが?一体何の?」

『和不足にならないように。和の充電です』

俺は一気に顔が熱くなる。

女はいつもこんな甘い台詞を言われてキュンキュンしてるのか?!

俺は雅紀の胸に両手を突いて身体を引き離した。

「何回もいうけど、お前はマジで恥ずかしげもなくそう言う事を平気でっ!」

『言いませんよ!』

「はぁ?何?」

『だからっ!…あなた以外にこんな臭い事、言った事ありませんっ!和だから…あなただからですよ…。』

俺はグシャグシャっと髪を掻きむしり、ハァ~ッと長い息を吐いた。

「降参だよ。本当…神様も悪戯が過ぎるよな…本気になった相手がまさかお互い男だなんて。」

『…確かに。悪戯にしちゃあ…色々障害が多そうですね』

苦笑いしながらも雅紀は俺の手を引いて立ち上がらせる。

それから、ゆっくり首筋に顔を埋め、痣になった部分に息がかかる。

俺はまたあの痛みが走ると覚悟を決めてギュッと目を閉じた。

案の定、容赦なく皮膚が引き攣れる。

「くっ…」

『じゃ、帰りますね。また…明日。』

「ぁ…あぁ…また」

軽くキスをして玄関を出て行った雅紀。

俺は唇を撫でてから

首筋の痣の部分に

手を置いた。

著者

ninon

オリジナルの小説を書いていきます。 嵐さんの大ファンです。 黄色を愛でる幸せに生きています。 二宮和也Addiction... どうぞよろしくお願いいたします。 尚、このブログ作品はフィクションであり、実在する人物、団体等とは一切関係ございません。

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