寂しいならば~バレンタイン~

masaki’s Book

付き合い始めて1ヶ月と少しが経った。

正月までに引っ越しは終わらなかったんだけど、2人で家を探してようやく2月、バレンタインデーを間近に控えて新居に入る事が出来た。

見つけた部屋は、お互いが住んでいたマンションより、少し広くなって、個人の部屋は確保されている。

俺自身は個室を必要としなかったんだけど、和の言い分だと、集中し始めると朝も夜も無くなるもんだから必要なんだと押し切られてしまった。

それもこれも、規則正しいサラリーマンとして働く俺の生活を乱したくないからだという和の優しさだった。

だけど俺達2人はいつもリビングの真ん中に置かれたコタツに集合してしまう。

仕事から帰ると、コタツで眠ってしまってる和を見ては死ぬほど癒された。

この人居るだけで絶対マイナスイオン出してんだよなぁ。

『ただいまぁ』

鞄を置いてジャケットをハンガーに掛ける。

『ん?…』

俺は妙に甘い香りが、部屋を満たしている事に気づいた。

鼻をクンクンさせて辺りを見渡す。

そこでやっと見慣れない箱がコタツの上に置かれている事に気づいた。

『何だろ、これ』

コタツに足を入れて布団の中に両手を入れ机に前のめりになりながら箱を覗き込んだ。

どうやら甘い香りはこの箱からする気がしてならない。

俺が手を伸ばそうとしたその瞬間だった。

パシッと手首を掴まれ、振り向くと和が慌てた調子で俺の事を睨んでいた。

『あっ…た、ただいまぁ』

「…お帰り…ってか今日早くねぇか?」

まだ寝起きの和はムッとした顔で掴んでいた手首を離した。

『あぁ…今日半休なんだ。急に有休の消化催促されちゃって、仕事も片付いてたから上がって来ちゃった』

ヘラっと笑って見せると、和はハッとした調子でその赤い箱を両手に取った。

胸元の前で呆然としている。

『ど、どうかした?…そ、それ…何か大事な物でも』

和はそぉっと箱を開いて溜息をついた。

「ダメだ…」

『ぇ…?ど、どうかした?』

和は黙って俯く。

コタツの上に赤い箱を置いて、そっぽを向いたまま机に頰をついて不貞腐れている。

『和~?…かぁずぅくぅ~ん…どうかしたの?この箱…開けるよ?』

ピクンと肩は反応したけど、やっぱりこっちを向いてくれない。

俺はダメだって言わないのを返事と解釈して、赤い箱をそっと開いた。

そこには…

『チョ…チョコ?と、溶けてるね…』

「あぁ…溶けてる」

俺はそこで、慎重にキッチンに視線をやる。

料理をしない和なのに、シンク横に洗い物が干してある。

もしかして…まさか…

『和…これ、もしかして手作り?』

また華奢な肩がピクンと揺れる。

でも何も言ってくれない。

もう一度箱の中を覗くと、かろうじてハートに見えなくもないチョコレートが溶けてツヤツヤと輝いていた。

俺はソッと和を後ろから抱きしめる。

『ねぇ…もしかして俺の為に?明日バレンタインだなんて知ってたの?』

腕の中の和は小さく頭を左右に振った。

「朝まで原稿やってたから、あんまり日にち感覚なかったんだ…だけど、雅紀が出勤してすぐ吉高さんが乗り込んできて…」

俺は和を後ろから抱きながら髪を撫で天井を見上げた。

『あぁ…なんか俺、予想ついちゃったかも』

「明日バレンタインだって騒いで…俺、飯とか作らないし…吉高さんそういうの知ってるし、日頃の感謝だって…チョコ作るぞって…」

俺は苦笑いして

『あぁ…ははは、なんか目に浮かぶよ』

「でも俺…本当に世話になってるし、雅紀の為なら作りたいなって思って…おまえ、そういうの好きそうだし…」

俺は和のボヤきをただのノロケにしか聞こえず後ろでニヤニヤしていた。

静かに髪にキスしてしまう。

「でも、冷やして固めて、吉高さんと出来たねって喜んでたら、あの人いつもみたいにバァッと帰っちゃって…俺、昨日寝てないし…ついそのままコタツで…せっかくおまえに喜んでもらえ」

『喜んでるよ…』

俺は和の身体をキュッと抱き寄せた。

「だって溶けちゃって」

『俺すっごい…嬉しい。大好き。だって、あなた本気でこんな事しないじゃん。なのに、キッチンに立って俺の為にチョコ刻んだり固めたりしたんでしょ?』

「そっ、それは…そうだけど」

『ねぇ…これ…ハート?』

「うるさいっ!」

後ろからいつもの場所にキスをする。

首筋は赤黒く内出血を起こし続けていて、ここに口づけると…和は甘い声を出すようになった。

「んぅっ…ぁっ…んっ!」

後ろから二人羽織みたいに和の両脇から腕を伸ばし、箱のチョコに指を浸した。

『食べさせて』

「食べさせるって…溶けてるだろ」

人差し指に付いたチョコを和の口の中に差し込む。

「んぅっ!」

それから、顎を掬い後ろを向かせ口づけた。

クチュッと差し込んだ舌先に甘いチョコレートの味が広がる。

「んっ…はぁ…んっ」

俺はそのまま和を腕に寝転んだ。

和は体勢を変えて俺を見下ろす。

『美味しい…』

「ほんっと…甘いの好きだよな」

そう言って和が俺のネクタイを引き抜いた。

コタツに入ったまま、いつの間にか裸で絡まり合う。

時折そのせいで色んなところを打ってガタンと机が揺れた。

「ぁあっついっ!!!」

『アハハッ!マジで暑いねぇ、俺もギブッ!』

俺達は散々お互いを愛し合った後、コタツから飛び出した。

『汗だくだね』

「あぁ~、もう絶対コタツでなんてしないっ!」

和が髪の先から滴る汗を見てげっそりした顔をして見せる。

『フフ…俺も無理かも。お風呂入ろ?ね。』

俺はフローリングに裸で胡座をかく和の手を引いた。

湯船に背後から和を抱きしめる形で浸かる。

和の丸い指を後ろから弄びながら耳元で呟いた。

『いやぁ…でも和がハートのチョコ作ってくれるとか…俺マジで感動しちゃったなぁ』

すると和がゆっくり振り返って俺を見上げ呟いた。

「あれ、ハートじゃねぇかんな」

バシャッと水面を騒がせ和を見下ろす。

『えっ?!嘘っ!だって、ハートみたいに見えたよ?』

和はズルズルッと湯船に顎先まで浸かってしまう。

『え?えぇ?!ねぇ~!じゃあアレ何?何だった?』

「うるせぇなぁ…犬だよっ!犬っ!」

『へ?いっ犬?』

和はバツが悪そうにブクブク湯船に息を吹く。

言われてみれば…ハートの上の部分が犬の耳に見えなくも…ない…。

『ねぇ…何で…犬なの?』

俺は恐る恐る聞いてみた。

「そっ!そんなのっ!吉高さんが居るのにハートなんて恥ずかしくて作れるかよっ!…おまえ、いっつも尻尾振って俺に抱きついて来るから…でっかい犬みたいだなぁって…だから」

耳を真っ赤にした和。肩に力が入って、恥ずかしいのを我慢してるのが伝わる。

俺はもう、どうしょうもない愛おしさに駆られて、和をギュウっと抱きしめた。

パシャパシャッとお湯が跳ねて和が暴れる。

「くっ!苦しいっ!バカっ!加減しろよっ!ただでさえバカ力なんだからっ!もっ!ぁ…あっ!やめっ!どこ触っ!やっ!…んぅっ…まさっきっ!」

お湯が揺れる。

和の細い腰を引き上げ、壁に手を突かせ、さっきまで貫いて柔らかくなってる場所に、俺の熱を押し込んだ。

ギチギチと熱い身体の中で、溶けるような快感を味わいながら響き渡る喘ぎが外に漏れないよう、指を咥えさせる。

「んぅっ…!ぐぅっ!んむっ!んぅっ…ゔぅ…!」

『ハァッ…すっげぇ…きっつっ!』

「んんぅ~っっ!んぅっ!!!」

『あぁっもうっイクッ!!』

最後は両手で腰を掴んで激しく打ちつけた。

口から指が無くなった和は甘い声を張り上げて同時に果てた。

「ハァッぁあっ!!」

後ろから抱きしめ、そのままズルズル湯船に引きずり込む。

肩で息をついた和が俺の胸に頭を預けて呟いた。

「何回っ…はぁ…すんだよっ…バカ…茹だる」

クテンと力が抜けた和を横抱きにし湯船から上げ、軽くシャワーをかけて風呂を出た。

『ごめんね。可愛いくてつい…』

「ついじゃねぇ」

『気をつけます』

フローリングに座る和と向かい合って座った俺は、バスタオルで彼の頭を拭きながら謝罪した。

シュンとする俺を見つめて、和は苦笑いして呟く。

「ほんっと…犬みたいだよな。」

俺は和の頰に口づけながら

『…ワン』

と鳴いてみた。

そうしたら、目を細めたあなたが

「…可愛い…俺だけのワンコだかんな」

と真っ赤になった。

それはコタツのせいでも、お風呂のせいでもない。

俺のせいだって分かったら、嬉しくなって、単純にもまた、犬のように尻尾をパタパタしてしまう。

バレンタインの犬型チョコは

コタツの上で

すっかり溶けて

もはや見る影もなかった。

だけど、しっかり綺麗に頂いたのは言うまでもなく、来年は是非ともハートのチョコを期待してますと伝えると、和は俺に背中を向けて、小さな声で呟いた。

「おまえがビックリするヤツ作ってやる…覚えてろよ…」

『楽しみだなぁ…来年』

俺は和を抱きしめて、来年も再来年も…ずっとずっと一緒にいる夢を見る。

ずっとずっと

ずっと先まで。

END

著者

ninon

オリジナルの小説を書いていきます。 嵐さんの大ファンです。 黄色を愛でる幸せに生きています。 二宮和也Addiction... どうぞよろしくお願いいたします。 尚、このブログ作品はフィクションであり、実在する人物、団体等とは一切関係ございません。

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