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自宅に着いたら、キヨさんが慌てて駆けてきた。

「坊ちゃん!!ご無事でっ!!!」

俺はあまりの緊張にキヨさんに連絡をよこす事さえ忘れていたんだ。

『ごめんなさい!キヨさんもしかして…休んでないんじゃ』

「和也坊ちゃんとご一緒だったんですね…キヨの事は構いません。お二人がご無事で何よりです。」

「キヨさん、ごめんなさい」

ニノも肩を落として謝罪する。

『今日は休んでて良いから離れでゆっくりしてよ』

「いけません。坊ちゃん達のお食事はキヨが」

『キヨさんっ!…今日だけ、今日だけだよ。』

「坊ちゃん…」

「キヨさん、兄さんの言う事聞いて…体に触ると良くないから。」

ニノの言葉にキヨさんは仕方ないと項垂れながらも頷いてくれた。

「それではお言葉に甘えて…」

『うん…ゆっくり休んでね…いつもありがとう』

キヨさんはニッコリと微笑んで離れに向かった。

俺とニノはリビングでコーヒーを飲む。

向かい合うテーブルの向こう側の景色が、昨日までとは違って見えた。

少しだけ頬を赤らめるニノが見える。

何年も俺を待っていたお姫様だ。

「キヨさんに悪い事しちゃったな…」

『あぁ…ゆっくり休んで貰おう』

「うん…相葉さんが淹れたコーヒー、いつも美味しいね」

『よかった…昔からキヨさん、コーヒーしか手伝わせてくれないんだよ…危ないってきかないだ』

「分かる!フフ、俺にもそうなんだもん…良い人だよね…真面目で優しくて、俺…あんな人が母親だったらなぁって」

伏せた長い睫毛が、昨日堪能した艶のある表情と重なる。

これから、この盛る感情を隠しながら生きていくんだと思うと、猛烈な背徳感に襲われた。

「相葉さん、どうかした?」

『ぁ…いや…何でもない…キヨさんは俺たちの母親だよ。甘えてあげると良い。』

「…そうだね…」

はにかむ笑顔に俺は手が伸びそうになる。

我慢できないのは俺の方で…。

そう思っていると、ニノが向こう側からそっと俺の手を握ってきた。

『ニノ…』

「好きだよ」

『ニノ、家はダメだ…キヨさんが』

「今は居ない」

『リビングは離れから見えるかもしれない…』

一面ガラス張りの広い室内。

芝が広がる庭の向こうに、こじんまりとした離れが見える。

ニノはそこをジッと見つめながら言った。

「部屋なら良い?兄さん…」

『兄さん…か。…随分不機嫌だな』

「外もダメ、家もダメ…そんなんじゃ…おかしくなるよ」

俺は肩を竦めて見せ、立ち上がった。

『部屋へ行こう。』

ニノは黙って着いてくる。

俺の部屋に入ると、ニノはそっと抱きついてくる。

我慢が効かず、顎を掬い、深く口付けた。

著者

ninon

オリジナルの小説を書いていきます。 嵐さんの大ファンです。 黄色を愛でる幸せに生きています。 二宮和也Addiction... どうぞよろしくお願いいたします。 尚、このブログ作品はフィクションであり、実在する人物、団体等とは一切関係ございません。

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