61

玄関先で傘の雫を払う。

バサバサと音を立てると、中からキヨさんが顔を出した。

「坊ちゃん!おかえりなさいませ。あらあら、和也坊ちゃんが傘をお持ちしましたのに、随分濡れてしまわれましたね。」

『あぁ、翔ちゃんが傘を持ってなかったから、ニノが持って来てくれた傘を貸したんだよ』

「まぁ、そうでしたか。和也坊ちゃんも少し濡れましたね。ご苦労さまでした。お風呂を入れております。広いですし、風邪をひくと困りますから、お二人ご一緒に入られては?」

キヨさんのあまりに自然な言いっぷりに頷きかけてつい大きな声が出てしまう。

『きっ!キヨさん!何言ってんだよ!子供じゃないんだから!一緒になんて入るわけないだろ!』

持っていた傘を床に落としてしまう。

あんまりに俺が慌てるもんだか、ニノが割って入りキヨさんに笑いかけた。

「たまには良いじゃない!体が冷えてきたのは確かだし。兄さん、俺、背中流してあげるよ」

ニコニコ微笑むニノに、返す言葉が見つからなかった。

「それは良いですね!坊ちゃんお着替えの支度はしておきますからどうぞ」

『あ、あぁ…』

確かにうちの風呂場はでかい…。浴槽だって、恐らく大人四人は軽く浸かれるだろう。

俺とニノは脱衣所で目を合わす。

『おまえ…こういうのはやめろよ』

「こういうのって、どういうのだよ。相葉さんがいやらしいこと考えてるんだろ。俺は純粋に兄貴の背中をっ…」

俺は裸になったニノを抱きしめていた。

『二人の時に…兄貴とか言うな…』

耳たぶに齧り付いてやる。

ニノは身体を小さくして嫌がる。

「ごめんってば…痛いよ」

『…こんなのただの拷問だ』

「早く入ろうよ…キヨさんが着替え、持ってきちゃうよ」

ニノに手を引かれバスルームに入った。

湯船に浸かった頃、扉の向こう側から声がする。

「お二人とも、お着替え置いておきますねぇ」

『「はーい」』

声を揃えて返事をする。

まるでそれは、本当にただ、兄弟が背中を流しあうために湯を共有しているだけのように…自然な嘘だった。

キヨさんに嘘をつくのは…良い気分なはずはなくて…。

俺は湯を両手に掬って顔にかけた。

ニノはそれを見て

「ごめんなさい…そんな顔…しないでよ」

そう呟く表情に俺は焦っていた。

心の中を

簡単に読まれた気がする。

『謝るなよ…』

チャプンと湯船の中で動いた手が、ニノの腕を掴んだ。

湯の中で引き寄せた身体は滑らかにこちらに辿り着く。

腰のラインを撫でると、ニノが腕を突っ張りジャブンと湯を波立たせた。

「兄さん…俺、先に上がる」

ザバッと湯船から立ち上がり出ていくニノ。

俺は何も言えず、それを見送ってしまった。

誰が悪いわけでもないのに、上手くバランスが取れない。

俺とニノは…こんなにも愛し合っているのに…

アイシアッテ  イルノニ

著者

ninon

オリジナルの小説を書いていきます。 嵐さんの大ファンです。 黄色を愛でる幸せに生きています。 二宮和也Addiction... どうぞよろしくお願いいたします。 尚、このブログ作品はフィクションであり、実在する人物、団体等とは一切関係ございません。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です