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『キヨさ…ん』

「坊ちゃん…間違いです。…ですから…家の者はこのキヨだけに…キヨだけに留めて頂けますか?その告白」

『…キヨさん…だけに?』

「…はい。…坊ちゃんは…昔から大したワガママも言いませんでした。私は手を焼いた記憶がありません。…奥様が亡くなられた時以外は…。そんな貴方様が…間違いだと分かっていて、キヨにおっしゃるんですよね?…だったら…坊ちゃんの間違いは…キヨが全て頂きますよ」

キヨさんが

俺の間違いを

頂く?

全て…

「厚かましい発言をお許しくださいね…坊ちゃんは子を授からなかった私にとって、我が子も同然だと思っております。…私に出来る事は全てして差し上げたい…私は、坊ちゃんが可愛くて仕方ありません。それから…和也坊ちゃん…旦那様の血を分けたとあれば、坊ちゃんとは兄弟。私にとっては、可愛い子どもが増えたようで、勝手ながら大変嬉しく思っておりました。二人が恋仲になる事は予想しませんでしたが…話を聞いて納得です。…初恋からの想いだなんて…こうなるべくしてですわね」

キヨさんはいつになくよく喋り、動揺を隠しているようにも見えたけど、本心から俺たちをサポートすると言ってくれた事に間違いは感じられなかった。

どこからとも無くドッと疲れが身体を包み、俺は膝に肘を突き、顔面を両手で覆った。

『キヨさんが…理解してくれないかも知れないと思った自分が…恥ずかしいよ…こんなに、大事にされてるってのに』

そう吐き捨てると、背中を摩る手の平の感触に顔を上げた。

ニノは何も言わず、泣いていた。

泣きながら、俺の背を撫でて…。

キヨさんか立ち上がり、綺麗な桜色のハンカチを取り出すと、ソッとニノの涙を拭った。

「キヨさん…俺のこと…気持ち悪くないですか?」

ニノの震える声にグッと目を閉じてしまう。

「何を馬鹿なことを…こんなに愛らしい方をどうやったらそんな風にお見受けできますか?あなたは…坊ちゃんの大切な人…私の大切なご主人さまですよ」

俺は、夢でも見ているような気持ちで、込み上げる涙を…

止められなかった。

古びた喫茶店のマスター、翔ちゃん、おーちゃん、そして…

キヨさんまでもが…俺たちを許してくれるんであれば、もう…

怖いものはない気がして、悩んできた日々が遠く霞んで見えた。

「キヨさん…俺を…許して…ごめんなさい…ごめ…なさい」

ニノが泣き崩れて、俺が抱き寄せる。

『大丈夫だから。ニノ、誰もお前を責めてないよ。大丈夫」

過呼吸になる苦しそうなニノをキヨさんと二人部屋まで運んだ。

ベッドのニノに水を差し出す。

「ありがとう…迷惑、かけちゃって…」

「迷惑大歓迎ですよ…その代わり健康ではいてください…坊ちゃんあとは…頼みますね…氷枕が緩くなったら、ちゃんと取り替えてくださいね。私は夕方の食事の買い出しに隣町まで行きます。新鮮なお魚が入ってるらしいんですの。夕飯までには帰ります。…坊ちゃん、任せても平気ですね?」

キヨさんが優しく笑う。

俺はうなずいて、部屋を出るキヨさんを見送った。

いつ帰るかまでを告げて出て行くキヨさん。

俺は有り難くその時間を頂く事にした。

著者

ninon

オリジナルの小説を書いていきます。 嵐さんの大ファンです。 黄色を愛でる幸せに生きています。 二宮和也Addiction... どうぞよろしくお願いいたします。 尚、このブログ作品はフィクションであり、実在する人物、団体等とは一切関係ございません。

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