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キヨさんが帰る夕方までに、兄弟に戻る準備をする。

キヨさんが認めてくれたとはいえ、確実に彼女は動揺していたからだ。

許しを得て、突然兄弟が目の前で恋人になって良いわけないんだ。

今までと変わらず、節度を持って秩序を保って…。

それがせめてもキヨさんへの誠意だ。

無駄な意識をかき消す為に開けたアルコールの缶が、空になって一本リビングのローテーブルに佇んでいる。

ニノは寝室で身体を休めに、俺はぼんやりとリビングのソファーで横たわっていた。

その時だ。ポケットに入れていた携帯が鳴る。

取り出しながら上半身を起こす。

呼び出し音の相手は翔ちゃんだった。

『もしもし』

「あっ!!雅紀!たっ!助けてくれっ!潤がっ!」

電話の向こうで翔ちゃんが慌てている。

慌て過ぎてまるで用件が伝わらない。

『ちょっ!どうしたんだよ!落ち着いてっ翔ちゃん!』

「ぁ…あぁ…いや、そのっ!潤がっ」

『うん、潤くんに何かあったの?』

「いやっ!わっかんねぇんだよ!」

いつも周りを冷静に見れるタイプの翔ちゃんは少し嗜めたくらいでは治らない興奮状態だった。

『ねぇ!今どこ?!』

「どこって俺は家なんだけどっ…潤がっ」

『分かったっ!とりあえずそこ動かないでよっ!すぐ行くからっ!』

電話を切って立ち上がると、リビングの端にニノが立っていた。

「どうしたんだよ、凄いデカい声出してる…か…ら…」

ニノは俺の顔色を見て言葉に詰まる。

「何?…なんかあったの?」

翔ちゃんの事じゃない。あの動揺は、きっと潤くんの方に何かあったんだ。

俺はニノに言うべきか迷った。

潤くんは、ニノにとって特別な存在だからだ。

どちらかと言えば、兄弟である俺となんかより、よっぽど兄弟らしく支え合って生きて来たに違いない。

尋常じゃない翔ちゃんの焦りようを考えると、話す事が正しいとは思えなかった。

『ぁ…いや、何でもない。ちょっと俺、出るわ。キヨさんに謝っといて。急用出来たから飯要らないって』

ニノは首を傾げ、俺の手の携帯を奪った。

『おっ!おいっ!返せよっ!』

ニノはスムーズに携帯の画面をタップして、呟いた。

「相葉さんは分かりやすいんだよ。ホラこれ」

画面をこちらに突き付けて

「翔さんからじゃん。俺に用件言わないとこ見ると…潤くん絡んでるよね?」

超能力とか持ってねぇよな…

そんなに俺って分かりやすいのか?

俺は肩を落として頷いた。

『いいからおまえは家に居ろよ』

「はぁっ?何言ってんの?!ついてくに決まってんじゃんっ!」

『ダメだっ!!家に居ろっ!』

「ハッ…何それ…えっらそうに…嫌だよ!俺はっ!…っ…相葉さん」

俺はニノを強く抱きしめていた。

肩口に顔を埋めて呟く。

『おまえは俺のだよ?…偉そうにも言うよ。俺の大切な人なんだ…状況が分からない場所に連れて行きたくない』

「…でも…潤くんに何かあったんだよね?…俺は、潤くん絡んでるなら…うちになんて居られない。相葉さんの…頼みでも…」

ニノは俺の肩を掴んで顔を覗き込みそっと唇に触れた。

離れた唇は呟く。

重く…重く…苦し気に。

「連れて行って…潤くんは…俺の家族なんだ」

著者

ninon

オリジナルの小説を書いていきます。 嵐さんの大ファンです。 黄色を愛でる幸せに生きています。 二宮和也Addiction... どうぞよろしくお願いいたします。 尚、このブログ作品はフィクションであり、実在する人物、団体等とは一切関係ございません。

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