10

まーくんのベッドに潜り込む。

「ふふ、あったかい」

『寒くなってきたからねぇ』

そう言ってまーくんは俺を抱きしめてくれる。

この腕の中は心地良い。

髪を撫でてくれる。

優しく触れてくれる。

どうしても

それに慣れない。

窓の外で雨音がし始めた。

「まーくん…雨」

『うん…雨だね…止んだらまた…寒くなるよ』

まーくんは俺の頭を抱き寄せて髪に口づけ、眠そうに返事をする。

「まーくん…」

『ん~?…』

「アハ…眠い?………あれ…寝ちゃったか」

大学行って、俺の相手して、またバイト行って…夜中に呼び出されて…

そりゃ…疲れるよな…

まーくんの閉じた瞼にソッと触れてみた。

柔らかくて、中にある眼球の感触がする。

手を引っ込めると、まーくんの閉じた瞳をジッと見つめた。

真似をするように目を閉じてみる。

そうしたら、すぐに夢をみた。

実家の門扉の前に立ってる。

入れそうもない。

足が軽く震えているのが分かる。

どこからともなく、ピアノの音。

家じゃなくなった?

先生が弾いてる。

名前…

名前…なんだっけ…

あぁ…確か…大野…大野智…。

つかみどころの無い人。

笑顔が…印象的で…年上のくせに可愛かった。

“ニノ…”

何だ…

何か言われた。

心が救われたような…そんな大事な…

“ニノ…お前が居てよかった”

あぁ…そうだ

あの時、初めて…

俺は”存在”してる気がした。

ピアノの音のせいなのか、彼の言葉だったからなのか…分からない。

分からないから…答えが欲しくて音楽室に通った。

誰にも必要とされて居なかった空っぽの俺に…

居場所が出来たとさえ勘違いした。

それなのに…

あの人は黙って居なくなった。

未熟な感情が育つ前に潰されたような気持ちだった。

あの人を探すけど、俺には何も見つけられなかった。

幸福と絶望を隣り合わせにして、俺は途方に暮れている。

夢?

どこまでが?

全部?

全部だ

全部…

「ぅゔ…わぁあっ!ハァハァハァ…んだよっ!…なんなんだよっ!!!!」

うなされて飛び起きた俺をまーくんが抱きしめた。

『ニノっ!ニノっ!夢だよっ!大丈夫…大丈夫だから』

抱き竦められながら、定まらない視点で親指の爪をガリガリ噛んだ。

スッと口元からその指が奪われて、代わりにまーくんの手が唇に当たる。

俺はそれを我慢出来ず爪の変わりにガジガジと容赦なく噛んだ。

『ぅっ…っ!…』

まーくんの痛みを我慢する息遣いに少しずつ冷静さを取り戻す。

「ハハ…まーくん…手…血が出てる」

俺は結局

中3の冬から

壊れたまんまだ。

著者

ninon

オリジナルの小説を書いていきます。 嵐さんの大ファンです。 黄色を愛でる幸せに生きています。 二宮和也Addiction... どうぞよろしくお願いいたします。 尚、このブログ作品はフィクションであり、実在する人物、団体等とは一切関係ございません。

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