9

緑のチェックの傘は店長に良く似合う代物で、恋心はそんな物からでさえトキメキを連れて来る。

俺は恐らく情けない表情で、傘を畳んだに違いない。

始発の電車に乗り込んで、揺れる車体に身体を預ける。

じわじわと傘の先から雫が流れて、車内の通路を濡らした。

手持ち無沙汰な俺は携帯を弄りながらいつの間にか眠り込んでしまった。

短い期間で、自分への環境変化が激しかったせいだろうか。

一駅乗り過ごして目が覚める。

ムッとした寝起き眼を擦りながら改札を出た。

「歩くか…」

溜息混じりの独り言。

駅を出て傘を開く。

柄の部分を撫でるように握り、自嘲気味た笑みが溢れる。

店長の温もりを感じながらも、頭の中では燕さんの顔が浮かぶ。

まるで浮気性のだらしない男になった気分だった。

片方には完全に振られているというのに、めでたい頭だ。

“庵司を見殺しにした”

衝撃的な非日常の台詞が、消えない。

燕さんは謎だらけじゃないか。

医者まがいの事をしてるって言ってた。

あんな外車を乗り回して、高そうな時計をして、医者まがいとは胡散臭い。

つまりそれって、ドラマなんかでいう闇医者って事?

庵司が死ぬのを分かってたって…庵司は病気じゃなかったって事だよね?

燕さんは、全部告白したみたいに言うけど…

俺は何にも分かんないよ。

それが無性に寂しく感じていた。

燕さんが悪い。

弱ってる俺に、変なちょっかいをかけてくるから。

燕さんを思うと…

俺は何故だか

凄く

苦しい。

著者

ninon

オリジナルの小説を書いていきます。 嵐さんの大ファンです。 黄色を愛でる幸せに生きています。 二宮和也Addiction... どうぞよろしくお願いいたします。 尚、このブログ作品はフィクションであり、実在する人物、団体等とは一切関係ございません。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です