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車の中は静かだった。

自分のドキドキと走る心音が全部燕さんに聞かれているような気になってくる。

「あっ!あのっ!」

「ん?」

「榊さんの…お店、行くんですよね?」

「フフ、行かなぁ~い。さっきキャンセルしちゃったもん。榊、怒ってるだろうなぁ~」

「え?大丈夫なの?」

「大丈夫、大丈夫。大体いっつも怒ってるから。」

「燕さんて…何人居るんですか?」

一瞬キョトンとした表情をこちらに向ける燕さん。

俺は慌てて両手を胸の前でヒラヒラさせた。

「あぁ~いや!違うくてっ!その…ギャップが凄いから…違う人が何人も中に居るみたいって話で!」

ハンドルを握る燕さんはクスクス笑う。

「わっ!笑わないで下さいっ!」

「悪い悪い!…かっわいいなぁと思ってさ。俺、そんなギャップあるかなぁ?自分じゃ分からないけど。俺の中には…俺しか居ないよ…残念ながらねぇ」

苦笑いした燕さんはまたあの”寂しい顔”をしていた。

俺は膝の上でギュッと拳を握る。

やっぱりあんたの事を知らない俺が

嫌で仕方ない。

車はゆっくり緩やかなカーブを描く高級ホテルのエントランスホールに停車した。

「行こうか」

燕さんが車を降りる。俺も慌てて車を降りようしたら、ホテルの人がドアを丁寧に開いてくれた。

恐縮だなと小さく会釈して先を行く燕さんを追いかけた。

「つ、燕さん、車…」

「ん?あぁ、ここはバレーサービスが付いてる。気にするな」

ば、バレー?なんだって?

俺は頭にハテナマークを浮かべながら、燕さんについて歩いた。

後ろで黒塗りの高級車がキュルキュルとタイヤの音をさせながら移動させられていくのを眺める。

「天ちゃん、行くよ」

「あ、はいっ!」

呼ばれるがままに燕さんを追った。

クリスマスの日に使ったホテルよりうんと高そうだった。

部屋に入って思わずガラス張りの向こうに見える夜景に呟いた。

「高そうなホテルだなぁ」

「ハハ…安くはないぜ。今日は特別。」

後ろから燕さんがクシャっと俺の頭を撫でる。

部屋からは夜景が一望出来る。

向こうの方に海も見えた。

暫くすると、部屋にウェイターが料理を運んで来て、俺と燕さんは静かに食事を始めた。

飲んだことのないワインが胃袋を浸す。

「美味いか?」

「うん、ワイン…初めて飲みました。」

「…初めてねぇ」

燕さんは俺の手からワイングラスを奪い取り、高級そうな生地のソファーに体を押し倒した。

「あんまり飲むなよ。勃たなくなって寝られちゃ敵わない。大人しく着いてきたんだ…いいんだよな?」

上から見下ろされると、ヴァンパイアか何かのように見える燕さんは綺麗なんだけどやっぱり生気を感じない。

「…俺、あなたを知らないのが怖い」

燕さんは一瞬ビックリしたように目を丸くした。

それから、プハッと吹き出して笑い出す。

「おかしくない!」

「アハハッ!悪い悪い!いや、可愛いにも程があるなぁと思って。フフ」

片手で身体を支えながら、もう片方の手で口元を押さえながら笑うのを噛み殺す燕さん。

「もう…ほんと、燕さんって子供なんだか大人なんだか分からないよ」

俺は前回の時みたいに四肢を投げ出し大の字で天井を見つめた。

著者

ninon

オリジナルの小説を書いていきます。 嵐さんの大ファンです。 黄色を愛でる幸せに生きています。 二宮和也Addiction... どうぞよろしくお願いいたします。 尚、このブログ作品はフィクションであり、実在する人物、団体等とは一切関係ございません。

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