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天使の羽の形をした持ち手の鍵を回し施錠する。

丘の上からゆっくり二人で街へ向かう。

恥ずかしかったはずの手を繋ぐ行為も、今は気にならない。

俺の手を握る彼の手が大切だから。

もう離さないと決めたから。

シャンティがあるチャイナタウンは朝でも怪しい霧がかかっているようだった。

足取りは次第にお互い重くなる。

どこもかしこも紅色の妖しげな格子がかかった家屋が建ち並び、揺れる燈篭の火は絶えない。

俺が手を掛けて覗いていた格子の向こう側…

無意識に相葉くんの制服を強く握っていた。

『ニノ…気分が悪いならここで…』

「嫌だよっ!ちゃんとついて行くっ!キミは俺の番いだよっ!ちゃんと…見届けるからっ!」

相葉くんは少し屈んで俺の頰にキスをした。

『…分かりました。行きましょう』

店内はキツいお香の香り。

揺れる煙が動きに合わせて渦を巻いては室内に散る。

「んぅっ…っはぁ…」

微かながら、甘美な喘ぎが奥から聞こえる。

俺が相葉くんを見上げると、彼は苦笑いして

『三人番いですから…頻度が…その…おそらく』

人差し指でポリッと頰を掻く相葉くんに、ふぅん…と含みを持たせながら返事した。

『ごめんください…相葉です』

ガタンッと奥に続く扉を開く。

そこには、黒いレースの目隠しをした上田と着物の前を開いた中丸が絡み合い、それを亀がキセルを弄びながら眺めているという、つまりは真っ最中の現場が現れた。

『す、すみません。改めます』

「おいっ!…まぁ、待て…お前、番いと来たのか?」

シャンティのボス、亀は鼻をクンと鳴らし俺の匂いを嗅ぎとった。

『ボスから…大野から…連絡はありましたでしょうか」

相葉くんは亀の言う事を無視してギュッと拳を握り呟く。

俺は壁の影から飛び出して、相葉くんの側に並んだ。

亀がシャランとあの不気味な鈴の音を鳴らし、袖を払ってキセルを灰入れにカンッと打ちつけた。

「ほぉ…ニノ…だったかな?可愛い番いよ。そう睨むんじゃないよ。俺たちゃ商人だぜ?支払いがない客は金になるよう仕立てなきゃならねぇ…そうすりゃあ、何でも用意立ててやる。それが万屋シャンティだ。しかしまぁ…嵐のボスからの申し出は断れねぇ…昔、奴に絡んで酷い目に遭ったしな…」

『借金は…必ずボスに返します。俺に翼と、翼を維持する薬を用意して頂き、ありがとうございました。そして、俺の運命の番いに、素晴らしい翼になる薬を頂き、感謝しています!お世話になりましたっ!!』

相葉くんは頭が膝につくんじゃないかと思うくらい丁寧に深く頭を下げた。

中丸と上田は着物を羽織り直し、前身頃を整えながら亀の両サイドに座る。

「フンッ…真面目な奴だ…少し遊びを覚えると良い…」

亀がキセルを灰入れにコトンと置き、両サイドの中丸と上田の肩を抱き寄せた。

「遊びの無い男は飽きられるぞ」

まるで両手に花と言わんばかりにニヤリと笑う亀。

俺は相葉くんの前に出て言った。

「飽きませんっ!俺はっ!絶対彼を一人にしませんっ!俺たちはっ…運命の番いだから。」

『ニノ…』

後ろを振り返り、相葉くんに微笑む。そしてもう一度正面の三人に言い放った。

「彼を助けてくれてありがとうございました!お支払いはとりあえず済んだので!もう相葉くんに手を出さないで下さいっ!」

「気の強い番いだなぁ…まぁ良い…金が入ればお前らに用はないさ。二度と…彼に手を出さないと約束しよう。しかしだ…困ったらいつでも歓迎するぜ。♪シャンティなら何でも揃う…お代は後から…♪ってな」

「いっ!行こうっ!相葉くんっ!」

『えっ!あっ!はっはいっ!』

汗なんて滅多にかかないのに、相葉くんの手を引く手はベタベタと汗ばんでいた。

著者

ninon

オリジナルの小説を書いていきます。 嵐さんの大ファンです。 黄色を愛でる幸せに生きています。 二宮和也Addiction... どうぞよろしくお願いいたします。 尚、このブログ作品はフィクションであり、実在する人物、団体等とは一切関係ございません。

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