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亡霊が取り憑いてる。

雅さんは、二宮さんを諦められないんだ。

だから、あの人があんな風に馬鹿げた行動をする。

割れた食器をどんな顔で、棚にしまったっていうんだよ。

俺はリビングまで歩いてやっぱり我慢出来ず寝室に引き返した。

その扉に、ゴンッと額を打ち付ける。

中から音はしない。

俺はまるで独り言みたいに喋りだしていた。

『二宮さんを見つけたのは…3年前の雨の日です。俺はあなたに一目惚れをして…truthで働き始めた。あんたの犬にしてもらえた。二宮さんの指を舐めるのも、鎖で繋がれたままあんたを抱くのも…俺は正直…嫌じゃない。二宮さんが好きです。絶対にあんたが、俺を好きになる事がなくても…俺は多分あんたを諦められない。ただ… 夢は見ています。…あんたが、俺に抱きついて、耳元で俺を好きだと言う…俺はそんな事で…そんな妄想で…息も出来なくなるくらい…幸せなんですよ』

扉に両手を突いて耳を押し当てる。

『二宮さん…命令しても…良いですよ』

寝室の中で小さな音がする。

俺は独り言を続けた。

『二宮さん…居なくなれでも、死んでしまえでも…良いですよ…俺は…あんたの言う事なら…なんだって』

ヒタヒタと裸足の足音が近づいて、扉の向こうでピタリと止まった。

向こう側で、扉に触れているような音がする。

ザリ ザリ…

扉に当てた耳に、向こう側から撫でられる音。

『二宮さん…好きです…苦しいょ…好きで好きで…苦しい』

トンと音がして、扉を押して離れたような音。

「帰れ…俺は相葉さんの困った顔は好きだけど…それ以上でも以下でもない…」

俺は二宮さんの言葉を吸い込んで、吐き出しながら、扉を撫でた。

『あんたは…酷い…』

「あぁ…俺はね、相葉さん…自分が一番それを良く知ってるんだ。だから、帰れ」

『…二宮さん…知ってますか?犬ってね…遠くに捨てても、飼い主の香りを辿って…ちゃんと戻ってくんの…帰巣本能ってヤツ』

返事がない。

俺は続ける。

『離れませんよ…俺はあんたが俺を捨てても……離れません』

返事を聞かず、俺は二宮さんのマンションを出た。

辺りはもうしっかり昼間で、見上げたマンションが太陽光にかすみ、まるでそこには何もないみたいで、全部、夢だったんじゃないかって

そんな気になって

さすがのくだらない妄想に

溜息を吐いて涙ぐんだ。

投稿者

ninon

オリジナルの小説を書いていきます。 嵐さんの大ファンです。 黄色を愛でる幸せに生きています。 二宮和也Addiction... どうぞよろしくお願いいたします。 尚、このブログ作品はフィクションであり、実在する人物、団体等とは一切関係ございません。

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