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嫌な予感。

胸騒ぎ。

黒いスラックスに、白いカッター、ベストに蝶ネクタイ。

繁華街を走る俺は、ぼったくりバーの店員が客に逃げられたのを追っかけてるか、それこそ、飛ばれた客を追っているたまに見る光景の一つとして、さほど目立ちはしていなかったろう。

ただ、その街を過ぎた場所で走る俺は、時期外れのハロウィン仮装に失敗した男か、頭の変な奴に見えてる事間違いなしだった。

すれ違う”普通”を纏った奴等が好奇の目で俺を振り返る。

息を切らせて、街中を走る俺は一刻も早くソコヘ辿りつかないとならなかった。

チラチラ見え隠れする

生と死の世界。

二宮さんの中にある…生の力が弱って見える。

見えるはずなんて無いのに…

約束な…なんて

守る気もないような声で

嘘をつく飼い主が

許せない。

許さない。

オートロックをマンションに住む住人を待って通り抜ける。

ポタポタと顎先から汗が滴り、エレベーターの床を濡らす。

扉のガラス越しに、後ろに居た住人が肩を縮めて隅に身体を収めているのが映っている。

息を切らせて、こんな格好で、汗だくな奴を不審者扱いしない方が無理だろう。

「ぁ…すみません、降ります」

『あ、ごめんなさい』

背後に居た住人が先にエレベーターを降りて行く。

閉まった扉に安堵して、俺は膝に手をついた。

最上階の角部屋。

黒い門扉に手をかけて、いつも通り傘立てを一瞥。

玄関には鍵がかかってなくて、それもいつもの事。

扉を開けて中を覗く。

シンと静寂が鳴る。

『二宮さん…』

返事はない。

革靴を脱いで、廊下を歩く。

リビングへ出る扉を開くと、広いリビングに出て向かいがバルコニー。

そこに二宮さんは身体を預けていつもみたいにタバコを吸っていた。

身体の力が一気に抜けて行く。

『二宮さんっ…』

呼んで近づくのに、全く反応は無い。

『二宮さん…迎えに…来ました。』

ジーンズに白いセーター…

『二宮さん?…聞いてますか?』

返事をしない二宮さんを怪しんでゆっくり距離を詰める。

そこでやっぱり様子がおかしい事に慌て、大きな声が出た。

『二宮さんっ!!』

走ってバルコニーに出た。

掴んだ肩は力無く揺れ、身体がぐにゃりと俺に向かって倒れ込んで来た。

指先に挟まれたタバコが皮膚を焦がしかけていて、慌てて奪い取り、床に押し付けて消火する。

俺のへたり込んだ胸元に仰向けに倒れて来た二宮さんは青白い顔をしている。

『じょ…冗談だろっ!!おいっ!!二宮さんっ!!二宮さんっ!しっかりしろっ!』

パンパンと頰を打っても反応がない。

意識の無い人間の身体は思ったよりずっと重く、抱き上げようと力を込めたら、支える手がヌルリと滑った。

恐る恐る自分の手の平を確認する。

『ぁ…ぁ…う…嘘だ…ろ?…なっ…』

声が出ない。

悪い予感は 赤 紅 朱

それは

思ったより正確に俺を

刺激した。

投稿者

ninon

オリジナルの小説を書いていきます。 嵐さんの大ファンです。 黄色を愛でる幸せに生きています。 二宮和也Addiction... どうぞよろしくお願いいたします。 尚、このブログ作品はフィクションであり、実在する人物、団体等とは一切関係ございません。

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