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白いセーターから滴る赤い血が、支えた俺の腕を染めた。

引き上げた袖から覗いた腕にある切り口はパックリ開いて、生々しい血を垂れ流している。

『ぁあ…あぁ…もうっ…もうっ!!何でっ!!!』

俺は二宮さんの身体をギュッと抱きしめた。

血の匂いが鼻を突いて、涙が溢れて、嗚咽が漏れる。

我慢出来ない妙な声が喉を締めて切り裂くようだった。

『くっ…そぉっ…ざけんなよっ!ふざけんじゃねぇよっ!!』

二宮さんの身体を抱えてソファーまで運び、バスルームからタオルを出して腕を縛って血塗れの手でポケットから出した携帯を乱暴にタップした。

『ちくしょ…ちくしょおっ!』

呼び出し音にイラつきながら携帯を強く耳に当てる。

「もしもし、相葉か?」

『滝沢さんっ!医者っ!医者しりませんかっ!!』

「相葉、落ち着けっ!どうした?何が」

『二宮さんがっ…薬を打ってます…手首を切ってて、血がっ!』

電話の向こうでチッと焦る舌打ちが聞こえた。

「意識はっ!」

『ありませんっ!』

「分かった!すぐ向かわせるから!お前はそこで待機だっ!」

荒々しく怒鳴るような焦った言葉の後、携帯はすぐに切れた。

リビングのテーブルの上に注射器。

俺は頭をガシガシ掻いてソファーに横たわる二宮さんの手を握り額に押し当てた。

『これだけは…あんた嫌いなはずだろ?何でだよ…何でこんな事…』

雅さんは薬に溺れて死んだ。

“もうお前を苦しめたくない”

そんな呪縛みたいな言葉を残して、やめてくれと泣いて懇願した愛する人の為に…。

二人で愛を育んだ部屋のバルコニーから

ゆらゆらと

羽衣みたいに衣服を揺らしながら

二宮さんに差し伸べられた手を掴まず

落ちて行ったんだろう。

二宮さんはいつもバルコニーの下を見下ろしていて、指先のタバコはまるで弔いの線香の煙りのようで、俺はいつも不思議だったんだ。

どうしていつもバルコニーに身を委ねているのか…。

いつも…彼と話をしていたんだろうか。

彼は二宮さんを呼んでいたんだろうか。

握った手が冷たい。

『風邪ひきますよって…言ったでしょうが…あんたバカだよ…本当に…人の気も知らないで…』

ピンポーン

インターホンが鳴って、重い身体を立ち上がらせて玄関に向かうと、櫻井さんとヨコに並んで、知らない男が立っていた。

投稿者

ninon

オリジナルの小説を書いていきます。 嵐さんの大ファンです。 黄色を愛でる幸せに生きています。 二宮和也Addiction... どうぞよろしくお願いいたします。 尚、このブログ作品はフィクションであり、実在する人物、団体等とは一切関係ございません。

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