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朝、飛び起きたら隣に冬空は居なかった。
ソッと寝室を出たら、リビングにメモが残されている事に気づく。
“学校には休みを連絡しておく。身体、無理させて悪かった。”
冬空の居ない部屋をぐるっと見渡す。
大した荷物もなくて、冬空が居ないだけで随分広く感じた。
携帯の画面を見つめて、気が重いのを隠せないまま春子さんの携帯を鳴らした。
きっと心配してる。
探し回ったんじゃないだろうか。外泊で連絡をしない事なんて今まで一度だってない。あってもちゃんと連絡をして、青葉の家に泊まるくらいだ。
なんと言えば良いか、考えても答えが出ず、とりあえずすぐに連絡をしないとマズいような気はしていた。
コール音が辛い。
「はい、秋空?どうしたの?」
いつもとなんら変わらない春子さんの声に、逆に俺が驚いた。
「ぁ…あのっ!えっと…」
「何ぃ?今再放送のドラマ観てんの!昨日青ちゃんちさ、夜ご飯なんだった?」
「え?…昨日?」
「うん…帰り遅いから青ちゃんに連絡したら、はしゃぎつかれて寝ちゃったから泊まらすって言われの。」
「あぁ…え~っと…ハンバーグ…ハンバーグだった。」
「そう、わかった!じゃ、今日はカレーだ!切るね!ドラマ良いとこなの!バイバーイ」
「ぅ…うん、じゃ」
俺は口を手で塞いだ。
青葉が上手くやってくれたんだと分かった途端、足腰の力が一気に抜けてしまい、へたり込んだ。
青葉は俺が外泊した事を
知ってる。
きっと…
それがどこかも…知ってる。