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シャワーを浴びて、身体中にキスマークが付いている事を知り、全身が恥ずかしいくせに嬉しい気持ちで包まれた。

冬空に会いたい。

今すぐにでも。

そんな思いが強くなる。

洗面台の鏡に映る自分の明るい髪色を撫でたり摘んだりする。

冬空が愛しい顔をしながら、俺の髪が母親の色に似ていると言った。髪を撫で上げる癖は父親譲りだったんだと、切なくなった。

冬空を知ると、胸がキュウッと苦しくなる。

もっと、もっと知りたいなんて…欲張りになる。

不思議な感覚に戸惑いながらも、自分の中で気持ちが整理されていくのが分かった。

冬空が帰るまで…シーツに包まってジッとしていた。

たまに覗いた携帯は怖いくらい静かで、誰とも繋がっていないんじゃなかと思うほどだった。

青葉から…連絡はない。

外がオレンジに染まり始めた頃、玄関で物音がして俺は寝室から飛び出した。

スーツ姿の冬空が少し疲れた顔でただいまと呟くから、俺はその胸に飛び込んで顔を埋めた。

「心細かったか?…起こしても立てないかと思ったから置いて行ったんだけど…」

俺は冬空の言葉に首を左右に振った。

「大丈夫…あのさ、冬空…青葉、来てた?」

顔を上げた俺はそう呟くと冬空から目を逸らした。

冬空はそれを許さなかった。

すぐに顎を掴んで目を合わせてくる。

「来てたよ。」

来てたという言葉を聞いてホッとした。

「そっか…」

「…今日は帰らなきゃな。送るよ」

「大丈夫…一人で」

「送るから」

灰色の瞳が寂しそうに揺れるから、ソッと髪を撫で上げて、キスをした。

「…出来るならずっと側におきたい…帰したくない。もう、寺崎や他の女にとられる心配もしたくない。」

ギュッと抱きしめられて、俺は甘い香りを吸い込みながら、首筋に顔を埋め呟いた。

「何だよ、それ…冬空らしくないな」

「俺を何だと思ってるんだ。そんな鋼のメンタルしてないからな」

不貞腐れる彼が可愛く思えてゆっくりもう一度キスをした。

「…冬空は自信満々でいなよ…」

「自信満々…ねぇ…」

片眉を吊り上げた美しい顔に、プッと吹き出してしまう。

「アハハ、冬空ってすっごい独占欲、強いのな」

「言ったろ…秋空だけ…秋空だけが特別。」

冬空は口づけながら服の中に手を差し入れる。

俺は身を捩りその手を掴んだ。

「冬空…今日は帰る。…青葉と…話さなきゃならないんだ。」

「…言うと思ったよ。」

「ちゃんと向き合わないと…青葉は…青葉は」

「大切な友達…だろ?」

俺は冬空の言葉に苦笑いした。

きっと冬空は俺が青葉と二人で会うのも、話すのも嫌に違いない。

それは痛いほど分かったけど…こればっかりは譲れなかった。

「…行こう。送るよ」

冬空は俺の髪を撫で上げて、諦めたように微笑んだ。

投稿者

ninon

オリジナルの小説を書いていきます。 嵐さんの大ファンです。 黄色を愛でる幸せに生きています。 二宮和也Addiction... どうぞよろしくお願いいたします。 尚、このブログ作品はフィクションであり、実在する人物、団体等とは一切関係ございません。

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