9

『和はね…

死んでしまったんだ』

ドクンて大きく心臓が鳴る。

「し…んだ?」

『あぁ…長い間、入院していたんだ。この高台に…学校とホラ、病院があるだろ?』

相葉さんが学校の斜め先を指差す。

生い茂った森の中で辛うじて蔦まみれのグレーがかった病院の壁が見えた。

確かにあそこには古い病院がある。

今もまだ辛うじてやっているはずだ。

俺は固まってしまって気の利いた言葉なんて出て来なかった。

『気にしないで…和くん』

「…ごめんなさい俺…」

相葉さんは微笑みながら首を左右に振った。

『今日も君に会えて良かった。…嬉しいよ。だから、和也の事は…君が気にしなくていいんだよ。』

カズ…ヤ?

今…そういったよな?

男?

相葉さんの…恋人の話だよね?

「相葉さん…大切な人って…」

『あぁ…漢字がね、和くんと同じだよ。読みは違うんだけどね。…俺たちの関係はきっと誰にも受け入れて貰えないものだった。…君も…そうかな?』

相葉さんの表情は苦しそうに歪んだ。

俺は相葉さんの冷たい手首を握って首を強く左右に振った。

「今の時代っ!そんな事珍しくないよ!…多分…えっと…なんだっけ…そのえっと…ゲイとか、バイとか!そんな人は沢山居るんだよ!えっと…つまり、おかしな事じゃないよ」

相葉さんはポカンと俺を見つめる。

『和くんは面白いね。なんだっけ…その…ゲイとかバイ?とかは異国の言葉?何だか凄いね。和くんがそう言ってくれただけで、随分と気持ちが軽くなったよ。俺たちは…ずっと…長いこと隠れていたからね…』

相葉さんはまたあの病院に目をやった。

愛おしそうな表情は何だか寂しげで今にも消えそうな儚さがある。

俺は息が詰まりそうだった。

何だろう…相葉さんを見てると

凄く苦しい。

胸の辺りがぎゅっと締め付けられてドキドキして…

少しでいいから…その潮風になびくサラサラの髪に指を通してみたくなる。

相葉さんの手首を掴んでいた俺の手に冷たい相葉さんの手のひらが重なる。

ポンポンと撫でられて、

『ありがとう』

そう言って

彼は笑った。

投稿者

ninon

オリジナルの小説を書いていきます。 嵐さんの大ファンです。 黄色を愛でる幸せに生きています。 二宮和也Addiction... どうぞよろしくお願いいたします。 尚、このブログ作品はフィクションであり、実在する人物、団体等とは一切関係ございません。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です