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6限は何も頭に入って来なかった。

この授業が終われば…俺はあの特別棟に配置された保健室に踏み込まないとならない。

昼食を食べる前に見た光景が何度だって蘇りながら、胸を騒つかせた。

キーン コーン…

上の空で過ごす俺の頭に霞むように静かなチャイムが響いた。

先生が出て行き、教室が途端に騒がしくなる。

それと同時に清掃時間になって、割り振られた場所にダラダラと生徒が流れていく。

ホウキで殺陣をして遊ぶ奴、雑巾を縛ってボールを作って野球を始める奴。

まともに掃除をしない男子に女子がブーブーとクレームをつける。

いつもとなんら変わらない教室。なんら変わらない校内。

なんら変わらない…俺の予定だった。

潤くんが、ゴミ箱を持ち上げながら俺を呼ぶ。

「ニノぉ~、ゴミ捨て行こうぜ~」

「あっ!うんっ!」

俺は慌てて潤くんに駆け寄って、ゴミ箱の反対側を持った。

「悪い!俺、これ捨てたら、そのまま行くわ。ギリだから!」

「あ、じゃあここでいいよ?撮影だろ?行きなよ」

ゴミステーションに着く手前で潤くんを送り出す。

「悪いっ!サンキュー」

潤くんの背中を見送ってホッとしていた。

何かバレちゃいけない事がバレるんじゃないかと知らぬ間に力が入っていたんだ。

ゴミステーションにゴミを出して、空になったゴミ箱の中に視線を落とした。

溜息が吸い込まれる感じ。

憂鬱と不安…

胸のざわめきは不確かな感情を膨らませて少しだけ涙腺を潤ませる。

怖い。

そう感じていたのに、思春期真っ只中の俺が見てしまった映像が邪魔をして、相葉先生の事ばかり考える自分に酷く動揺していた。

俺は今まで、男に興味を持ったりした事はない。

まさか、相葉先生に何か期待したりだなんて…ないないない!!

焦りながら一人頭を左右に振った。

「はぁ…何か疲れて来ちゃったな…」

一人で一喜一憂しているような自分に嫌気がさして、ゴミ箱を手に教室に戻った。

ホームルームはあっという間に終わってしまい、生徒たちは夕暮れの廊下に流れ出す。

俺はいつまでも動けずに自分の席に立っていた。

行かなきゃ…委員会の話が…あるんだから…

チャイムが鳴る。

気付くと教室には俺一人がポツリと取り残されていた。

オレンジの夕陽が教室を強く染めていく。

その時だった。

静かになった校舎の廊下に…響く足音。

五限の終わりにすれ違った…あの人の

足音。

投稿者

ninon

オリジナルの小説を書いていきます。 嵐さんの大ファンです。 黄色を愛でる幸せに生きています。 二宮和也Addiction... どうぞよろしくお願いいたします。 尚、このブログ作品はフィクションであり、実在する人物、団体等とは一切関係ございません。

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