22

「潤くん…モテるあなたを見込んで聞きたい事があるんだけど…」

日曜の晴れ渡った空の日。

都会の狭い区画に建てられたお隣さんの家。潤くんの部屋と俺の部屋は二階の端に位置しており、窓を開けて手を伸ばせば握手が出来るくらいの距離だった。

窓の冊子にお互い身体を捻って座りながら話す事は昔から良くやってる事。

「あ!女、紹介しては無しね!後々面倒い事じゃなきゃ聞かない事もないけど…どした?」

「うん…あのね…もしさ、恋人と連絡先を交換するとするじゃん?」

「うん」

「その二人はね、付き合いたてだよ?」

「うん…」

「連絡って…いつ取り合うもんなの?」

「…は?」

「あっいやっ!だからっ…そのっ、つまりさ」

「いつでもいんじゃん?…何?聞きたい事ってそんな事?」

「そっ!そんな事って!」

潤くんはまん丸に目を見開いて首を伸ばす。

パカっ…と口を開いて

「何なに!ニノ、彼女できたの?いつよ!誰誰?」

俺は期待に輝く潤くんのキラキラした瞳を横目に溜息を吐く。

「いや…彼女とか…そういうんじゃ…」

指先同士を絡めてクルクルイジイジ口籠る俺に、潤くんはピョンとサッシから降りた。

座っていたそこに手を掛けてニヤリと笑う。

「おばちゃんに言っちゃおーっと!」

「ダッダメっ!絶対っ!」

肩を竦めて潤くんはつまんねぇって呟いた。

俺は、この何でも話してきた幼馴染みに、男が好きになった事を告げるか否か…悩んでいた。

でも…何となく潤くんは俺を咎めない気がして…。何の根拠もないんだけど…言ってしまった方が楽な気がして、俯いた口から、小さく声が漏れた。

「ぁ…あの…さ、俺、付き合ってる人が居るんだ」

「ぉ、おぅ…何か急にテンション下がってない?」

俺はフルフルと首を振って、屋根と屋根の隙間から青空を見上げた。

「男の人なんだ…付き合ってんの…」

長閑なはずの空に流れる白い雲が、風になびかず静止画に変わったように感じた。

恐る恐る空から向かいの窓の潤くんに視線を落とす。

潤くんはビックリした顔のまま空で止まった雲のように静止していた。

苦笑いしながら、首を傾げて、出窓のようになったサッシに乗せた足を抱き寄せ小さくなる。

「キモい?」

へへっと乾いた笑いに、潤くんは戸惑った顔を逸らし呟いた。

「別に…別にキモくねぇよ…でも…正直ビックリしてる。」

「アハ…そりゃそうだよね!ごめんごめん…」

「いつから?…」

顔を逸らしたままの潤くんが言う。

「ぁ、あぁ…えっと…一週間くらい…前…かな。」

「俺、知ってる人?」

潤くんがようやく俺の顔を見つめた。

今度は俺が顔を逸らしてしまう。

体育座りして引き寄せた膝に額を押し当てて

答えた。

「誰にも言わないでね。…保健の先生…」

えー!とか反応があるんじゃないかと思ってたんだ。

だけど、反応なんてまるで無くて、俺はゆっくり顔を起こして潤くんに視線をやった。

潤くんは完全に固まっていて、眉間には酷い皺が刻み込まれて、小さくだけど否定する様に首を左右に振った。

「潤くん…?」

「おまえ…」

「何?」

「聞いた事…ないのかよ…」

潤くんはビックリした困惑顔のまま身を乗り出してきた。

「相葉だろ?アイツ、良い噂聞かないぜ?着任してから、まだ日が浅いってのに俺みたいに大して学校行かない奴でも知ってるんだ…結構有名な」

「何それ…」

「え?」

「何それ…潤くんさ、俺が先に恋人出来ちゃったからって、ひがんでんのっ?!」

俺はサッシから部屋に飛び降りた。

背中を向けたまま俯く。

「ニノっ!そんなんじゃっ」

俺はクルッと潤くんを振り返った。

「そんなんじゃって!じゃあ!どんなだよっ!人の恋人、悪く言うなんて酷いじゃん!!…酷いよ!!」

バタンッと窓を閉めてカーテンを勢いよく引いた。

カーテンにギュッと掴まりながら、ズルズルへたり込んでしまう。

何?

良い噂聞かないって…

確かに俺は、クラスでも休み時間は携帯でゲームしてるし…友達も潤くんくらいしか居ないようなもんだけど…毎日ちゃんと通ってる俺の耳にはそんな話入って来なかった。

結構有名な…って何?…

確かに…確かに相葉先生は何人かの生徒と関係を持ってたけど…。

俺、やめてって言ったし…面倒くさい事言うなっていいながらも…俺の事、好きだって言ってくれたもん!

先生は今、俺の恋人で、俺は…

先生のモノなんだから!

著者

ninon

オリジナルの小説を書いていきます。 嵐さんの大ファンです。 黄色を愛でる幸せに生きています。 二宮和也Addiction... どうぞよろしくお願いいたします。 尚、このブログ作品はフィクションであり、実在する人物、団体等とは一切関係ございません。

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