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駅のホーム。

スーツの俺と、すっかり私服の相葉さん。

『ニノ…うち、来ない?』

向かいのホームに入って来た電車が轟音を立てるもんだから、俺は聞き間違いかと相葉さんを見上げた。

相葉さんも、聞こえなかった事を理解して、俺の耳に息がかかるくらいの距離で耳打ちしてくる。

『明日休みだし、うちで飲み直さない?』

俺は心臓がキュウッと音を立てるのを感じながら、小さく頷いた。

相葉さんがヨシっ!て言いながら俺の髪をクシャっと撫でる。

苦しくて、嬉しくて、下半身がゾワっとして、どうしょうもなく幸せな瞬間だった。

電車の中で相葉さんは俺の肩を使って軽く居眠りをする。

良い香りがして、眠ってるのを良い事に髪に何度も静かに口づけた。

すっかり勃ち上がった熱を鞄で押さえつけながら、何度も何度も香りを吸い込んだ。

相葉さんが降りる駅で彼を揺り起こし、一緒に下車する。

鞄は暫く両手で前を覆い隠すのに使った。

『ニノ、ビールでいいよね?』

「うん」

相葉さんのマンション。

鍵を差し込んで玄関扉が開くのを息を殺しながら待っていた。

『散らかってるけど、どーぞ』

「お邪魔します」

廊下を歩きながら、俺は辺りを見渡して、リビングに出た瞬間、一番にコンセントのタップを確認した。

俺に、リアルな相葉さんを届けてくれる相棒。

あの中には、盗聴器が仕込まれている。

そして、キッチンに置かれたキッチンタイマー…バスルームにある体重計…寝室に置かれたペン立ての…ボールペンにはカメラも付いてる。

覗き慣れた…あなたの部屋だ。

俺はリビングのソファーに案内されジャケットを預けて深く腰掛けた。

キンキンに冷えた缶ビールが差し出され、軽くぶつけ合い乾杯する。

不思議な感覚だった。

転職して一か月。

その間に随分と可愛がって貰った自覚はある。

こうして自宅にまで招かれる所までこじつけたかと思うと、張り詰めていた糸は少しばかり緩んでしまう。

『ニノは?彼女とか居ないの?』

相葉さんは美味しそうにビールを飲みながら俺に問いかける。

俺は苦笑いしながら首を左右に振った。

「俺は…そういうのは全然」

『そっか、じゃ、俺が振り回しちゃっても叱られる相手は居ないんだね。良かったぁ』

「良かった?」

『だって、彼女持ちだと何かと忙しいだろ?イベント然り、普段もデートとか…あぁ…会わない日も電話したりすんじゃん?』

「そ、そうなのかな?」

『そうだよ。定時で帰ったのに、どうして連絡くれないの?!とか、喧嘩になったりしてさ、誘う方も気を使うってやつ。ニノは、とりあえず独り身みたいだし、俺も別れたばっかだし、飲みに行ったりしようよ!ね!』

俺は相葉さんにニッコリ笑い返す。

願ってもない話だ。

今日はツイてる。

すこぶるツイていて、少しばかり怖いくらいだ。

そこからは自宅って事もあって、相葉さんは浴びるように酒を飲んだ。

あまり考えたくはなかったが、恐らく彼女と別れたショックはそれなりで…。

ちょっとばかり、やけ酒の匂いを感じていた。

「相葉さんっ!飲み過ぎだよっ!ホラッ!」

グデングデンになった相葉さんに肩を貸しながら寝室へ運ぶ。

『だぁ~いじょ~ぶっ!!』

「全然大丈夫じゃないよ!っぅわぁっ!ちょっ!」

相葉さんをベッドに寝かしたら、首に腕が絡みつきそのまま相葉さんの上に倒れ込んでしまう。

腰と背中に腕が回ってキュウッと抱きしめられる。

「ぁ…相葉さん…」

『ぅ…ん…美羽ぁ……』

あの女の名前…。

酔って、寝ぼけて、間違えてるんだ…。

怖い人だよ…

こんな腹立たしい展開だってのに、あなたは俺に、コレをチャンスだなんて思わせる。

本当に…

イケナイ人だ。

著者

ninon

オリジナルの小説を書いていきます。 嵐さんの大ファンです。 黄色を愛でる幸せに生きています。 二宮和也Addiction... どうぞよろしくお願いいたします。 尚、このブログ作品はフィクションであり、実在する人物、団体等とは一切関係ございません。

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