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真っ暗な駅を降りた。

いつも使ってる駅より、数駅も離れた随分遠い場所で、正直、右も左も分からない。

指定されたファミレスをナビに入れて、街灯の少ない通りを歩いた。

小道を出たら、この街の1番栄えた場所ではないかと思うくらい店が軒を連ねていた。

仕事帰りの人は居酒屋へ、家族連れはファミレスなんかに入って行く。

誰も他所の街から来た俺の事なんて気にしない。

人の波に紛れながら、涼しい顔をしてファミレスに入った。

人気が少ない最奥のテーブル席で至って普通のサラリーマンが座っていた。

年の頃は50歳くらいだろうか。ビールっ腹にジャケットのボタンが飛んでいきそうだ。

軽く会釈をしてみると、彼はニッコリ笑って俺を手招いた。

鞄を隣の椅子に置いて腰掛ける。

「こんばんは。綿毛さん」

向かいの太ったサラリーマンは俺を偽名で呼んだ。

間違いない。

俺はニッコリ笑って鞄から札束が入った紙袋を取り出した。

200万ある。

この時ほど、貯金が趣味で良かったと思った事はない。

男は黒いクリアファイルを、さも書類のように手渡して来た。

指先で中を確認すると、無造作にシルバーの鍵が隅に入っていた。

「では、これは残りの分です。」

俺は札束と分からないであろう紙袋を相手に向かって机の上を滑らせた。

上司と部下程もある歳の差のスーツを着たサラリーマンが、何かをやりとりしている。

これは、誰が見ても、暗く深い闇の業者が絡んでいる光景には到底見えなかった。

そう…仕組まれた日常の光景は、悪意が溢れる世の中のように、こうして当たり前に”普通”の中で起こっている。

相手の男性がニヤリと口角を引き上げると

「悪い事は言いません。そろそろケジメをつけた方がいいですよ?貴方のやり口だと、お相手を殺し兼ねない。フフ、たくさんそんな方を見て来た。金も、心も、もたなくなる。」

俺は肩を軽く竦めて立ち上がった。

「忠告、ありがとうございます。では」

名前も知らないあなたに言われなくたって…

そんな事には薄々気付いてる。

自分の思いは危険で、あの人を幸せにしない。

こんな事が知れたら、相葉さんは…

俺を詰って見下すだろう。

きっと軽蔑されて、通報されて、逮捕されたっておかしくない。

全て失って、全て無かった事になる。

ファミレスを出て、冷えた空気を感じながら、手にしたシルバーの鍵をペロッと舌で舐めた。

無慈悲にも鉄の味が口内を満たす。

下半身が疼いて、馬鹿げた精神状態に苦笑いが溢れた。

まさか、相葉さんの味がするんじゃないかな…なんて。

妄想はどこまでも俺に優しく、どこまでも無限だったから。

相葉さん…

愛してるんだ。

俺を

嫌わないで。

投稿者

ninon

オリジナルの小説を書いていきます。 嵐さんの大ファンです。 黄色を愛でる幸せに生きています。 二宮和也Addiction... どうぞよろしくお願いいたします。 尚、このブログ作品はフィクションであり、実在する人物、団体等とは一切関係ございません。

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