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食事の間、ニノは饒舌につまらない話を上手く膨らませてキヨさんを喜ばせた。

「ねぇ、兄さんもそう思うだろ?」

『…ぁ、うん、そうだな…』

「何だよ、俺の話聞いてる?酷い兄貴だよねぇ、キヨさん」

「まぁまぁ、フフフ…でもぉ、キヨは今嬉しいですよ…お二人がこんなにも仲良しになって…最初はどうなることかと。やっぱり血が繋がっているご兄弟ですからね…安心しました」

一瞬、食卓が凍りついたのかと錯覚した。

シンとしたのは、ほんの一瞬で、恐らくキヨさんには気付かれていない。いや、きっと…他の誰も…気づくことはないような静寂。

「ふふ…キヨさんには心配かけました。もう大丈夫です…もう…大丈夫ですから」

キヨさんの優しい声が、切り裂くように、血を謳う。

ニノの冷たい声が、それを

全力で肯定して…

俺は胸が焼けるように苦しくなり、口を手で強く抑えた。

『ぅゔっ!!』

「坊ちゃんっ!!!どうなさいましたっ!」

椅子から滑り落ちて蹲る俺に駆け寄るキヨさん。

嘔吐しかけた俺が見たのは、立ち上がって見下ろして来る琥珀色の、まるでビー玉のような生気のないニノの視線だった。

キヨさんに介抱されながら、一頻り胃袋をカラにするまで吐いて戻ったダイニングテーブルには、もうニノの姿はなかった。

そして、もちろん…部屋にさえ、その姿は 

なかった…。

著者

ninon

オリジナルの小説を書いていきます。 嵐さんの大ファンです。 黄色を愛でる幸せに生きています。 二宮和也Addiction... どうぞよろしくお願いいたします。 尚、このブログ作品はフィクションであり、実在する人物、団体等とは一切関係ございません。

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