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嫌な予感がタイヤを何度かスリップさせる。

焦燥感がチリチリと胸の奥の何かを焼いて行くようだった。

雨は強く、視界は俺たちの未来みたいに曇っている。

お目当てじゃない潤くんがあんな目に遭ってるんだ…

ニノが

無事なわけない。

ただ一つ分かるのはそれだけ。

ここ数ヶ月、そういった行為をする事なく生活していた二人。

暗い世界には、それなりのルールがあるわけで、ヤクザが足抜けに指を持ってかれるなんて一昔前の掟は、きっと今も形を変えて存在しているのと同じようにして、ニノや潤くんが居た世界には、切れるにはそれなりの覚悟が必要なのかもしれない。

一度使った黒い湯は、身体をドロドロにして擦っても落ちない。

出たくても、出られない。

ニノが突然…身体を売る事を辞められたとしても、買い手側の想いは無くならない。

愛しい玩具は…手離せない。

それが例えば…

異常な愛情だとしたら尚更だ。

随分と閑静な住宅街を抜けた先に、一軒家が幾つか離れて建っている所まで来た。

一番孤立して建てられた古い日本家屋。

メモに書かれた住所とピッタリ当てはまる屋敷だった。

バイクを止め、錆びた門扉に手を掛ける。

ギィッとお化け屋敷のような歪んだ音を立てて中に入る。

裏庭に続く通り道には雑草がビッシリ生い茂っていた。

雨が音を強めて俺は飲み込まれるようにずぶ濡れだった。

引き戸に手を掛けると、ガタガタ音を立てるだけでしっかりと施錠されている。

バシャバシャと足元の水を跳ねさせながら家の周りの窓を回った。

どこもしっかり施錠され、中から、遮光カーテンらしき重い布がこちらの視界を妨げていた。

顔の水滴を手で拭い、ゆっくり耳を澄ませながら庭の雑草をかきわけ歩く。

まるで人が住んでるとは思い難い程の荒れようだ。

『ニノ…どこに居るんだよ』

呟いて屋敷を睨みつけた。

著者

ninon

オリジナルの小説を書いていきます。 嵐さんの大ファンです。 黄色を愛でる幸せに生きています。 二宮和也Addiction... どうぞよろしくお願いいたします。 尚、このブログ作品はフィクションであり、実在する人物、団体等とは一切関係ございません。

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