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最悪の事態を考える。

ニノはここにはいないんじゃないか…

どこか別の場所に…

ガタンッ!!

思いを巡らせていると、中から大きな物音がした。

無人の廃墟から聞こえるには生々しく、人の熱を感じる気配にギュッと拳を握る。

中に…誰かいる。

気付かれない方がいいのかも知れないが、どこもかしこも鍵のかかった状態は最早どうする事もできなかった。

背が高くなった雑草に塗れ立ち尽くす。

俺はジッと裏庭から縁側に並んだ何枚ものガラス戸を見つめ、覚悟を決めて、グチュグチュと音を立て、水をたっぷり含んだスニーカーを前に出した。

大きな一枚ガラス戸の前に立つ。

もう、選択肢は残っていなかった。

昔習わされた空手が、こんな所で生きるなんて、なんだか妙なもんだと溜息がでる様な。そんな気持ちで、俺の足は物凄い勢いでガラスの中に蹴りを入れていた。

ガシャーン…

パリン、パリンと窓枠に残ったガラスの破片が落下する。

足に幾らか刺さったガラスの破片がジンジンと現実を突きつけてくる。

これでもし、ここにニノがいなかったら、俺は器物損壊罪に住居侵入罪で完全にパクられるだろう。

それでも、もう俺には何かを冷静に考える思考回路はあまり残っていなかった。

水を含んだスニーカーのまま縁側に足を歩踏み入れる。

ミシッと音を立てて一歩、また一歩と中に歩踏み込んだ。

かすかに感じる人の気配に唾を飲み込んで息を吐く。

心臓が思ったよりも激しく打ちつけ、胸が苦しかった。

中は真っ暗だ。

遮光カーテンが窓という窓に掛けられていて、光を感じない。

ちょうど、階段の下まで来た時だった。

艶のある、聞き覚えある声が耳を掠める。

あぁ…やっぱりそうだよな…

そうに違いない…

俺は俯き、髪の先から滴る雫を見つめ、それから、ギュっと目を閉じた…。

「あぁッ!!やめッ!!いやだっ!!ぅゔっ!!ぁああっ!!」

悪戯に

響く

愛おしい人の

痛む声。

著者

ninon

オリジナルの小説を書いていきます。 嵐さんの大ファンです。 黄色を愛でる幸せに生きています。 二宮和也Addiction... どうぞよろしくお願いいたします。 尚、このブログ作品はフィクションであり、実在する人物、団体等とは一切関係ございません。

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