86 最終回

気がついたのは病院だった。

天井は無機質に白く、首を動かすと、スーツを着たガタイの良い男たちが俺を可哀な目で見ていた。

男たちは刑事で、俺は幾つかの罪状に囚われている事を簡単に説明された。

あれからどうなったのか分からなかったけど、ニノや潤くんに手を出したあの男は生きていて、俺は殺人を犯していない事だけが理解できた。

殺すつもりだったのに…

心の中の感情は、まだあいつが生きているんだという事が許せず、思わずそれを口に出しそうになっていた…。だけど…至らない…感情は一人の男だけを想ってのらりくらりと揺れる。

泣いていた。

白い肌に赤い血をつけて、悲しそうに…

泣いていた。

ニノは…どうしているだろう…

逮捕されて、どれくらいたっているんだろう…

疑問ばかりが浮かぶくせに、初めからこうなる事を覚悟していた俺は、取り乱すこともなく、ただ代わる代わる現れる刑事の話を無気力に聞いていた。

容体が落ち着いた頃に、自分が居たのは一般の病院だったことに気づくことになる。刑事が見張りをしている事は分かっていたが、これから拘置所に入ると分かり、手錠をかけられた手を見下ろして、俺は自分がニノの話以外を全くと言って良いほど何も聞いていなかった事に苦笑いしてしまった。そう、自分が居る場所さえ…分かっていないなんて。

それから…朝とも夜とも知れない曖昧な時の流れの中で、俺の事件は不起訴となる。

示談金が早々に支払われた事と、相手は想像した通りの大きな会社勤めの役員だったが、こちらが雇った弁護士の力量が優ったらしく、自分の地位を守る為、色々な事が事実と異なって改ざんされ、どちらもが困らない今後を手に入れる形でケリがついたんだ。

久しぶりの我が家だった。

キヨさんが泣いていた。

親父はこんな時でさえ仕事で、もちろん家にはいなかった。

翔ちゃんと潤くんは仲良くやっているとおーちゃんからメールが入っていた。

二人に亀裂が入って無くて良かった…

心底安堵して、荷が降りたような溜息が溢れた。

帰宅出来た俺にニノは…

ニノは………

静かに俺の腰に腕を回し、小刻みに華奢な体を震わせて

呟いた…

「馬鹿やろぅ…」

俺は何も言えず、ニノの頭を抱き寄せ、その柔らかな髪に鼻先を埋めた。

甘くいい香りがして、ゆるゆると緩む涙腺が、体の機能を失ったようにして涙を流す。

『もう、間違わないから…一生…俺のそばにいて』

例えばこれが悪であろうと

例えばお前が間違いなく血の繋がった弟だろうと

もう二度と

もう二度とあんな思いはごめんだ…

『愛…して…る…』

ニノが唇に何度も触れて

「泣き虫…」

と優しく呟いた。

そうして、額を合わすと柔らかな声で囁く。

「俺と相葉さんの血は…一生変わらない」

『俺と…ニノの…血…』

「そうだよ…だから離れられる筈ないんだ。血液がね…あなたを忘れないんだよ…もうずっと、ずっと叫んでる。あなたが好きだって、あなたが俺を好きだって…叫んでる。そうだろ?」

俺はただ、止まらない涙のままに微笑んだ。

『うん……ずっと、叫んでる…』

俺とお前の血が混ざり合った深い海で

夢のように長い悪に

これからずっと

ずっと…

溺れよう。

シロツメクサの花冠を

もう一度キミに贈るよ

そう

花言葉はキミにピッタリな

“幸福”という

未来だから。

END

著者

ninon

オリジナルの小説を書いていきます。 嵐さんの大ファンです。 黄色を愛でる幸せに生きています。 二宮和也Addiction... どうぞよろしくお願いいたします。 尚、このブログ作品はフィクションであり、実在する人物、団体等とは一切関係ございません。

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