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Green side

「別れるって言ってんだろっ!!離せよっ!嫌なんだよっ!まーくんのバカッ!バカッ!」

俺の恋人は

ド級の

……ツンデレだ。

『カズくん、ごめんってば!違うんだよ!勘違いだよ?本当にっ!』

「離せよっ!」

『ヤダよっ!離したらまたカズくん暫く俺のこと許さないもんっ』

俺に両肩を掴まれ身動き取れないのは幼馴染みの二宮和也。

下町の隅っこに、二軒連ねて建つ家のお隣りさんで、小さな頃からずっと一緒に育った。

この春、晴れて一緒に高校合格。

ピカピカの高校一年生だ。

そして中三の冬、俺から告白して付き合い始めた恋人でもある。

カズくんは肌が白くてスベスベで、凄く綺麗な目の色をしている。

笑う時、腕や手の甲を口元に持っていって笑う仕草が堪らなく可愛いい。

だけど…問題が一つ。

彼は…ほんっとに、涙が出る程ワガママなんだ。

「まーくん!」

『はっ!はいっ!』

「俺の事…本当に好きなの?」

きゅるんと水分を溜めたブラウンの瞳が上目遣いで俺を見上げてくる。

だっ!ダメだっ!ほんっとにダメっ!

こんな可愛い目で見るんだもん!何でも言うこと聞いちゃうよぉ~。

俺はカズくんの掴んでいた肩をソッと離して細い腰に腕を回した。

『好きだよ。…大好き。』

パァッとカズくんの表情が明るくなって、目がキラキラする。

クイッと腰に回していた腕に力を入れてカズくんの細い身体を引き寄せる。

それから、薄い唇に向かってゆっくり顔を傾けた…ら!!

グイッと俺の制服のネクタイを握ったカズくんが

「俺まだ怒ってる!チューなんかさせてあげないんだからなっ!バーカッ!!」

目の前の綺麗な瞳がギラリと俺を睨み付けて、掴んでいたネクタイごとドンと胸を押され身体がよろめいた。

その隙にカズくんはドンドンと先に家路を帰っていく。

『まっ!待ってよ~っ!カズくんっ!』

呼びかけた声は虚しく地面に落ちる。

はぁ…と重い溜息をついて頭を掻いた。

その時だ。

後ろから肩に手がかかる。

ポンと乗った手のひらの感触。

振り返るとそこにはニヤニヤした翔ちゃんが立っていた。

彼の名前は櫻井翔。一つ上の先輩で、彼もまた俺とカズくんの幼馴染みだ。

鞄を肩に担いで、フフフと意味深に笑いかけてくる。

『翔ちゃん…なぁにぃ?…また一段と嬉しそうな顔だね…』

卑屈な顔で翔ちゃんを睨む。

「いやぁ~、別にぃ。またお姫様の機嫌損ねたなぁ~と思って。」

俺はまた溜息をつく。

『あのねぇ、ぜんっぜん面白くないからねっ!こっから大変なんだからねっ!翔ちゃんなんかに分かんないくらいなんだからねっ!』

俺は拳を翔ちゃんに向けて突き出す。

それを胸の前でパシッと乾いた音を立てて受け止められてしまう。

「ハハハ、雅紀はほんっとニノに弱いんだから」

翔ちゃんはケラケラ笑いながら歩き出す。

俺は歯向かう気力もなく、後に続いた。

桜も散った4月の終わり、葉桜を横目に通学路を行く。

翔ちゃんは俺とカズくんが付き合っている事を知る唯一の人物で、俺の相談は殆どこの人の手の中に納められていた。

「で?今日は何で怒ってんだ?アイツ」

遠く豆粒みたいになったカズくんを見ながら呆れたように呟く翔ちゃん。

『それが…』

俺はさっきの揉め事を話し始めた。

『掃除当番だった女子がね…ゴミ箱…重たそうに廊下引きずってたもんだから、代わりに持ってあげたんだよね』

「あぁ…見られたんだぁ」

『うん…そうみたい…全然気付かなかったんだけど、どうもずっと見てたみたいで…』

「どーせ女子のおしゃべりに愛想笑いで付き合ってだんだろ」

翔ちゃんが顔を顰める。

俺はカクンと項垂れて頷いた。

『でもさ、だからって別れるはないよ!ちょっと女の子と喋っただけだよ?カズくんだって、一部の女子から可愛い可愛いって凄く人気のくせにさぁ…俺だって…心配なのは同じなのに…』

翔ちゃんは大きな欠伸をしてから伸びをする。

全く話を聞いてるようには見えなかった。

『翔ちゃ~ん…』

「まぁ…あれだ、夫婦喧嘩は犬も食わないっつーだろ?」

『はぁ~?俺たち夫婦じゃないしっ!』

「ハハッ!年数にしたら熟年夫婦みたいなもんじゃん」

『ちっ!違うもんっ!!』

ギャーギャー騒いでいたら、翔ちゃんのマンションの下に着いてしまった。

翔ちゃんが俺の頭をポンと撫でてニッコリ微笑む。

「ニノは雅紀じゃないとダメなんだから!自信持って!なっ!」

『翔ちゃあ~ん』

「早く仲直りしろよ~、じゃあな!」

『もぉ…完全他人事だもんなぁ』

軽く手をあげた翔ちゃんはエントランスに消えて行った。

俺は翔ちゃんに向けてヒラヒラ振った手をダランと下ろすと、また前を向いて歩き出す。

暫く行くと、うちの玄関の門扉の前で足をぶらぶらさせて立ち尽くすカズくんが見えた。

『カズくんっ!』

「…遅い。」

『あぁ、ごめんね。途中で翔ちゃんに出会ってさ』

「俺より翔ちゃんが大事なんだ」

『ちっ!違うよっ!そんな訳ないだろ?』

「だって…」

今にも泣き出しそうなウルウル揺れる瞳にキュンとしてしまう。

『ぁ…上がって行くでしょ?まだ母さん帰ってないし。』

カズくんの手を握ると、耳を赤くして小さく頷いた。

著者

ninon

オリジナルの小説を書いていきます。 嵐さんの大ファンです。 黄色を愛でる幸せに生きています。 二宮和也Addiction... どうぞよろしくお願いいたします。 尚、このブログ作品はフィクションであり、実在する人物、団体等とは一切関係ございません。

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