24

暫くして、男に呼ばれ、二人で庵司をベッドに運んだ。

男はテキパキと点滴を繋ぎ、俺に視線を投げかけた。

「庵司の女か?」

「ぇ…あ…いや、俺…男です」

返事をすると、男はジッと俺の事を見つめプッ!と吹き出し、腹を抱えて笑い出した。

「わぁ~ってるわっ!アハハ!何それ、天然なの?庵司もまた変わったの捕まえたな」

目尻の涙を指先で払いながらズボンのポケットに手をしまい、ベッドにドサっと座った。

「か、変わってますか?俺…」

「ん~?まぁ、庵司と居るんだ、普通ではないだろう。」

違うか?と言わんばかりに俺にウインクする男。

「あのっ…あなたは…庵司とは」

「あぁ…あの状態じゃ紹介されてねぇんだな。俺は黒木燕(クロキツバメ)。一応…医者…かもな。」

ハハッと笑う彼はハッキリ自分を医者だとは明言しなかった。

「黒木さ」

「燕でいい。あんたは?」

「日高…雪乃です。つ、燕さん…庵司…大丈夫ですよね?」

「あぁ…コイツ不死身だかんな。生傷絶えねぇけど、急所は外れてたし、弾も貫通してた。縫うの大変なくらい肉めくれてたけどな」

燕さんのあっけらかんとした言いっぷりに、さっき見たピンクの肉を思い出して口を塞いだ。

「よく、そんなんで連絡出来たな。血、ダメなんだろ?」

「必死で…庵司に何かあったら…俺は」

立ち尽くす俺の前に来た燕さんはポンと肩を叩いて来る。

「雪乃ちゃん…もしかしてさぁここの家賃、払ってる?」

突然の質問にポカンとしてしまう。

たった今聞いた、傷の話や、弾?が貫通だとか、頭を整理しきらない内に聞かれるような内容ではない気がしたからだ。

「は、払ってます…庵司…無職だし…」

言って良いものか悩みはしたが、燕さんになら大丈夫な気がして話してしまった。

燕さんはまたクククと顔を覆い隠しながら噛み締めるように笑い出した。

「なっ!何かおかしいですかっ?!俺がっ!貢いでるみたいだから?!」

燕さんは腹をさすりながら手をヒラヒラさせる。

「違う違う!はぁ~面白い!庵司が無職?ハハハ。アイツ、俺の言いつけ守ってんのな。可愛いとこあんじゃん。」

燕さんが話す内容の半分も理解出来ず、俺は死体のように眠る庵司を見てからもう一度彼を見た。

「雪乃ちゃん、一応忠告な。庵司は…カタギの人間じゃない。こうして、危ない仕事をしてる。家賃を払わせてんのは…雪乃ちゃんがどうやらコイツの本命らしいからだ。」

燕さんの話は、半分ドラマで、半分は嘘。

結局全部、俺にとっては作り物に感じた。

「燕さん…」

困惑する俺の声に、クシャっと髪を撫でられる。

「俺が言ったんだ。本命作るなら、自分の側に置けって。別宅持たれたらカチ込まれでもした時、助けられないからな。あと、家賃を払わせてんのは、いつでも縁が切れるようにだ。」

「な、何ですか?それ」

「庵司に頼って、職を投げ出し養われるようじゃ、いざって時…コイツはその女を捨てられない。女は自立してなきゃダメなんだよ。」

だから…仕事をしてないフリをしてたのか?

何度も面接を取り付けたと言っては、時間になっても向かわなかったのは…嘘だったから?

『燕っ…くっ…』

「お~、お目覚め?思ったより早いな。さすが不死身の庵司。」

『クソッ…どうなって…る』

「起きあがんなよ!俺が丹精込めて刺繍してやったんだから!抗生剤が流してあるから、安静にしてろよな。」

『燕っ…雪乃に…余計な事…ハァ…ハァ…吹き込んでねぇ…だろなっ!』

「別に。ちょっと口説いてただけだ。なぁ…雪乃ちゃん」

俺はフイと視線を逸らした。

さっき聞いた話は聞かなかった事にしておかないとならないんだろうか。

庵司がヤクザだとか、俺が本命だとか…。

「嫌われちゃったみたいだな。ナンパ失敗。あ、雪乃ちゃん、薬置いてくから、庵司に飲ませて。コイツほっといたら飲まねぇから。おい!今回のっ!ちゃんと治さないと身体腐るぞ」

燕さんは床に置いていた鞄を手にして庵司を睨みつけた。

腐るって!そんな…

『ハッ…もう、大体腐ってんだろがヤブ医者め』

「言ってろ、バカ。明日の夕方また来る。大人しくしてろよ。あ、雪乃ちゃんSEXダメだからな!」

「しっ!しませんよっ!!」

『ふふ…シねぇ…の?しゃぶるくらいしろよ。…ってて』

腹をさすりながら庵司が笑う。

俺は二人の馬鹿げた会話に脱力していた。

全身が強張っていた数分前とは比べようがないほどに。

著者

ninon

オリジナルの小説を書いていきます。 嵐さんの大ファンです。 黄色を愛でる幸せに生きています。 二宮和也Addiction... どうぞよろしくお願いいたします。 尚、このブログ作品はフィクションであり、実在する人物、団体等とは一切関係ございません。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です