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庵司の側で眠る間、夢を見た。

俺は酷く泣いていて黒い喪服を身に纏い、行き場のない感情を叫んでいる。

息が詰まるようなリアルな映像に、筋肉を集中させ瞼を高速で開いたら、何の事はない、いつも見えるカーテンの隙間から、朝なのか昼なのか判断のつかない空模様が映った。

ソッと胸を撫で下ろして息を吐く。

隣にはボコボコにされているのにも関わらず端正な顔だった事が隠し切らない男がスースーと寝息を立てていた。

簡易で引っ張り出したハンガーラックに掛かった点滴。

いつも乱暴に俺を抱く腕が力なくそれに繋がれていた。

夢じゃなかったんだ…

燕さん…庵司の事、カタギじゃないって言ってたな…

ヤクザ…

庵司が?

何だかイメージ出来ない。

チャラチャラして、フラフラして、嘘つきで、自由気ままな甘えん坊で…

たまにとびきり優しい。

ヤクザってスーツ着て、事務所とかに居て、ピカピカの車乗って、男なんか興味なくて、綺麗なお姉さんをはべらせてるもんだと思ってた。

庵司に絡んだチンピラみたいな奴ら…仲間の人だったのかな…

上手くやれてないのかな…

庵司の前髪を優しくかき分けた。

『ゔぅ…』

「庵司っ!ごめん…起こしちゃった?」

『はぁ…久しぶりに…いてぇわ。勃たないかも』

「庵司…そんな事言ってる場合じゃ」

『おまえ…燕にどこまで聞いた』

天井を見上げた庵司は俺を見ないまま呟いた。

「何も…聞いてないよ」

『…雪乃は、嘘が下手だな』

俺を見ない庵司が怖かった。

燕さんから聞いた話を庵司に知られてはいけない気がして、何となく嘘をついた。

「嘘じゃないよ」

『まぁ…いいや。何聞いたか知らねーけど…おまえには何も関係ない。』

冷たく言い放たれた言葉に、背筋がゾクリとした。

突き放された感覚が怖い。

「庵司、俺」

『………雪乃…別れるか』

相変わらず天井から目を離さない庵司が静かに告げた。

俺は慌てて飛び起きた。

「ヤダっ!ヤダよっ!!何言ってんの!?」

その慌てぶりは、誰が見ても滑稽な程で、何も聞いてないなんて嘘さえ、何かを聞きましたと告白してしまっているようだった。

『近いうち、家探せよ。』

「庵司っっ!」

『雪乃…』

目を細めて、いつものように俺を見つめた。

少しホッとした俺は庵司にキスしようと近づくとフイと視線を外され

『可愛いなぁ…雪乃』

と呟いて、目を閉じた。

著者

ninon

オリジナルの小説を書いていきます。 嵐さんの大ファンです。 黄色を愛でる幸せに生きています。 二宮和也Addiction... どうぞよろしくお願いいたします。 尚、このブログ作品はフィクションであり、実在する人物、団体等とは一切関係ございません。

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