28

翌日、俺は会社を休み庵司の頼みでスーツを見に来ていた。

俺の好みで良い。

そう言われて、どこへ着て行くのかも教えられないままに渡された金で買い物に出た。

普段安物のスーツしか着ない俺にとっては庵司の注文はハードルが高く、まずどんな店に行くべきかさえ分からずじまいだった。

大体手渡されたのは50万もの大金だ。

俺のスーツなら何着買えるか知れない。

こうなったら…

外から見て明らかにオシャレで高いであろう店に乗り込んだ。

金額を提示したら、カシミア生地だとかいう光沢ある薄いストライプの死ぬほどカッコいいスーツが出てきた。

本来オーダーメイドも出来ると言うが、あんな身体だし、俺にサッサと買って来いと言うんだ。ここはもう仕上がった品を持ち帰る事にした。

手元でガサガサとなる大きな紙袋には重厚な箱に入ったスーツ。

庵司が着たら、きっと誰よりもカッコいいに違いなかった。

帰り道は行きとは打って変わって清々しく、気分も良かった。

こんな買い物、初めてだしな…

マンションに戻ると、寝室には燕さんが来ていた。

「雪乃ちゃん、眠れた?」

「ぁ…は、はい」

燕さんの口角が片方だけクイと上がる。

「来る日が一日ずれ込んだから心配してたんだが…しちゃダメだっつっただろ?」

ポンと頭を撫でられ、俺は恥ずかしさのあまり俯き唇を結んだ。

『燕、うるせぇ』

庵司がボヤくと、クルリと振り返った燕さんは肩を竦めた。

「マジで暫く禁止だ。次やったら裂けるぞ」

「燕さんっ!ごめんなさいっ!俺がっ!俺が」

恥ずかしくて口籠る。

「いいよ。どーせ庵司に言われたんだろ」

燕さんが俺にそう言うと、後ろで庵司がボヤいた。

『うちのネコには待ては教えてねぇんだよ』

「はいはい。てめぇはちょっと寝てろ。雪乃ちゃんコーヒーでも淹れてよ。」

「は、はい!ぁ、庵司、スーツ買ったからね。ここに置いておくから」

『おー、サンキュー。』

燕さんとリビングにあるソファーでコーヒーを飲んだ。

俺はその時、燕さんに連絡先を聞いた。

庵司の容態が急変したりしたら困るから…それから…庵司の気を許した人の連絡先を、知っておきたかったんだ。

庵司が俺と別れるなんて言ってたから…。

家を探せなんて…言ってたから…どうしても繋がりを作っておきたかったんだろうと思う。

それから、自然な流れで質問していた。

「燕さん…庵司は…何の仕事をさせられてるんですか?」

燕さんの連絡先が入った携帯を両手で握りしめて

呟いた。

著者

ninon

オリジナルの小説を書いていきます。 嵐さんの大ファンです。 黄色を愛でる幸せに生きています。 二宮和也Addiction... どうぞよろしくお願いいたします。 尚、このブログ作品はフィクションであり、実在する人物、団体等とは一切関係ございません。

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