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燕さんの車に乗り込んで、流れるネオンの光を見ながら呟いた。

「随分飛ばしますね…俺、こんな格好ですけど…予約してある食事って…高い店じゃないですよね?俺、あんまり今月余裕なくて…」

「あぁ…庵司の看病やなんかで仕事、かなり休んだからだろ?」

ハンドルを握り燕さんは苦笑いした。

「えぇまぁ……有休…もう残ってないみたいで。欠勤になっちゃうんですよね…」

「…そうか…」

「あの、どうして食事なんて…」

「…良いじゃないか!せっかく知り合いになったんだ。仲良くしようぜ。あ!そうだ!榊、知ってるだろ?」

「はい。何度か庵司に連れて行って貰いました。」

「今日はそこを貸し切ってある。榊は俺の先輩でな。医学部出てBARなんて経営してる変わりもんだが、料理の腕は悪くないんだ。」

「食事もやってるんですか?」

「知らないか?昼間はカフェレストランなんだ。夜はBAR。良く働くおっさんだよ」

燕さんは悪態を吐きながらも仲の良さがうかがい知れるように微笑んだ。

車を止めて店の入り口に立つ。

closeの文字を気にもせず、燕さんは扉を開いた。

「よぉ、燕、雪乃くん。」

渋い口髭が似合う榊さんが料理を並べながら俺達に気づき挨拶をくれる。

「おっひさ~。」

燕さんはカウンターの椅子に疲れたように体を預けた。

榊さんはそんな燕さんにビールを手渡す。

「帰りはタクシーだな」

ヒヒッと笑う燕さんはグラスのビールを煽った。

随分と良い飲みっぷりだ。

「雪乃くんも、座れよ。ビールでいいか?」

「ぁっはい!」

榊さんも混じって、三人で酒を飲んだ。

美味い飯も食べた。

次第に酔いが回った俺は、燕さんが時折神妙な顔をするのが気にくわなくて、肘で突いたりした。

「なぁに怖い顔してんすかっ!庵司に振り回されて疲れましたかっ?!俺なんてねっ!もう、たっくさん酷い目にあってんすよ!」

「雪乃ちゃん…」

「ほら!そんな顔する!俺はね!それでも良いんですっ!庵司になら!何されたって良いんですっ!もうね…大っ好きなんですよ!あの…ダメ男…」

「雪乃くん…」

「フフ…二人ともなんて顔するんですかぁ~っ!あんなんだけどぉ…みんな庵司が好きでしょ?ね?」

両サイドに居る二人を見てポンポン肩を叩く。

「あぁ…アイツの事を嫌いな奴は…不思議だけど居ないな」

「榊…雪乃ちゃん、大分酔っちゃったな…そろそろ帰るか」

「燕、庵司から預かってたんだ。コレ」

榊さんが燕さんに白い封筒を渡した。

燕さんは頷いて、それをケツポケットにしまう。二人が言葉を交わさないのに、何かを分かりあっているような空気は、何だか羨ましいなと思ったりした。

強くもない酒が進んだのは、二人が庵司の友達で、庵司の話を沢山してくれたから。

俺は上機嫌で、燕さんの捕まえたタクシーに乗り込んだ。

行き先を告げた燕さんは、俺を奥へ押し込むようにして乗り込んでくる。

「マンションと逆ですよ?」

「…あぁ…そうだな」

「燕さん?」

「うん…」

曖昧な返事を返して、燕さんは窓の外を向いてしまった。

酔いが覚めた気がしたのは

きっと…気のせいじゃない

著者

ninon

オリジナルの小説を書いていきます。 嵐さんの大ファンです。 黄色を愛でる幸せに生きています。 二宮和也Addiction... どうぞよろしくお願いいたします。 尚、このブログ作品はフィクションであり、実在する人物、団体等とは一切関係ございません。

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