46

何度起こしても中々起きない雪乃。

事務所でコーヒーを一杯飲んでからもう一度雪乃の身体を揺すった。

「ぅゔ…んぅ~…圭介さん?」

『おはよ。』

雪乃はガバッとソファーから起き上がった。

俺は紙コップのコーヒーを雪乃に手渡す。

「ここ…」

『店の裏だよ。事務所。隣がロッカールーム。まぁ、休憩室みたいなもんかな』

「ごめん…俺、またいきなり潰れちゃった?」

『うん、燕さんが送るって言ってたんだけど、一緒に帰りたかったからここに運んだんだ。ワガママだった?』

雪乃はううん、と首を左右に振る。

「一緒に帰れて嬉しいよ。あ、雪降ってたんだけど、積もってないかな?」

『どうかなぁ、じゃ、それ飲んだら帰ろう』

「うん」

雪乃がコーヒーを飲む間、デスクに座ってパソコンを打ち込んだ。

本社に上げるデータの簡単なまとめだ。

キリのいいところで作業を終えて雪乃と外へ出た。

外は真っ暗。

道に微妙な量で積もった雪は、お世辞にも綺麗とは言い難い有り様で、半分は溶けてビシャビシャ、半分は黒く汚れた固まりになっていた。

空に星はない。

「まだ降りそうだね」

雪乃が空を見上げて白い息がヒュッと広が

る。

『明日はホワイトクリスマスだな』

俺も空を見上げて呟いた。

早番は本当に真夜中の解放になるから、ラストまでより街が静かだ。

俺はソッと雪乃の手を繋いだ。

『雪乃、少し遠回りしてもいい?』

「いいよ。酔い覚ましの散歩…ふふ、人が居ないとこんなに静かなんだね。何だか違う世界みたい」

『あぁ…それなんか分かる。映画とかの世界みたいだよな。世界に一人きりっ!みたいな』

俺が笑いながらそう言うと、雪乃は繋いだ手をキュッと握り呟いた。

「世界に…二人きりだよ…」

俺は完全にドキッと心臓を射抜かれていた。

初めて人を好きになったような甘い少年のような感覚が蘇る。

『雪乃はズルい』

引き寄せて唇を塞いだ。

口の中が熱い。

溶けそうに柔らかな舌先が気持ち良くて、暫く離れられなかった。

雪乃の背伸びした爪先がふらついて身体が離れる。

「ふふ…外だよ」

『世界に二人きりなんだろ?』

「ズルいなぁ~」

『ハハ』

そんな風にふざけ合いながら…

俺は藤田くんに紹介された店を目指した。

いや、正確には、仕事前に訪れたあの宝石商を…。

著者

ninon

オリジナルの小説を書いていきます。 嵐さんの大ファンです。 黄色を愛でる幸せに生きています。 二宮和也Addiction... どうぞよろしくお願いいたします。 尚、このブログ作品はフィクションであり、実在する人物、団体等とは一切関係ございません。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です