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暗い一本道。

街灯がポツリポツリ。コンビニがあって、コインランドリー…そこから空き地のような空間が空いて、角に建ったばかりなのがすぐに分かる可愛らしい白い建物…。

角に…建ったばかりの…。

角にあった…古びたアンティークの看板を下げた小さな宝石商が

ない。

俺は一歩、また一歩と歩みを緩め、遂には立ち止まってしまった。

「どうしたの?」

『雪…乃…』

「圭介さん?」

白い建物を何度見直したところで、それはあの宝石商に変わらない。

あぁ……

やっぱりそうだったんだ…

おまえだったんだ

下手な変装しちゃって…

おまえだったんだろ?庵司

俺はゆっくり膝から崩れ落ちた。

「圭介さんっ!大丈夫?!」

雪乃が慌てて俺の腕を引き上げようとする。

俺はフルフルと首を左右に振って、流れる涙を止められなかった。

普通じゃない事態に雪乃は小さく俺の名前を呼び側にしゃがみ込む。

腕をギュッと握って、不安そうな表情だ。

『雪乃…今…何時?』

ズッと鼻を啜りながら呟いた。

雪乃は腕時計を見て

「もうすぐ…2時になるよ」

『そっか…もう…クリスマスだな』

「…うん…」

俺はコートのポケットからリングケースを出した。

『雪乃…これ…』

「…お、俺に?」

『うん…開けて』

雪乃は促されるままにパカッとリングケースを開いた。

キラキラ輝くリングが二つ並んでいる。

雪乃がジッとそれを見つめて、俺に視線を戻す。

『その指輪…庵司が買った物なんだ。』

雪乃の肩がピクッと揺れて、視線は指輪に落ちる。

『燕さんが俺に託しに来てね。正直、最初は困った。…庵司を面倒見てた龍道会の組長さんが…情けで左手だけ…焼いて墓に入れたらしい。その時…庵司の左の薬指に。もう片方は自分で持ってたらしくて…庵司は初めから雪乃に渡す気は無かったものだって…。だけど…燕さんが持ってるわけにもいかなくて、俺のとこへ来た。…これを渡せば、雪乃はまた…庵司と生きるのかも知れないって思った。…俺は…庵司として生きるんだろう…って。だけど…渡さないわけにはいかない。俺ね、本当に雪乃が好きだよ。だから…雪乃を愛した庵司の気持ちは…多分誰より良く分かる。だから…指輪に刻印をして貰ったんだ。』

雪乃は震える指先で指輪を摘んだ。

内側を見て、口を押さえる。

「圭介さんっ…」

『庵司と…雪乃と、俺のイニシャル。俺と庵司で…おまえを幸せにするから…雪乃…ずっと…側に居て下さい。』

カクンと頭を下げて目を閉じた。

ふわっと首に腕が絡みついて、雪乃が俺を包み込む。

「圭介さんは…ズルいよ…こんなプレゼント…こんな…ぅ…ぅゔ…」

俺は苦笑いして雪乃の後頭部を撫でた。

「俺はっ!!俺は庵司を忘れないっ!多分、これからもずっと…だけど…これから俺と生きて行くのは…これからも側にいるのはっ!!…これからも愛してるのはっ!!圭介さんだよっ…」

泣きじゃくりながら俺にしがみつく雪乃。

俺は雪乃の言葉に驚いて、押し倒されるように歩道のアスファルトに後手を突いた。

そのまま空を見上げると、白い雪がユラユラダンスでも踊るように降り始める。

ブルブル震える唇をギュッと噛みしめて、息が出来なくて、最後には変な声が漏れて、結局俺は…

声をあげて

泣いてしまった。

著者

ninon

オリジナルの小説を書いていきます。 嵐さんの大ファンです。 黄色を愛でる幸せに生きています。 二宮和也Addiction... どうぞよろしくお願いいたします。 尚、このブログ作品はフィクションであり、実在する人物、団体等とは一切関係ございません。

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