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「燕さ~ん!天く~ん!早く~!」

あのクリスマスの日から年が明けて、ようやく新年会のシーズンが落ち着いた頃、庵司の墓参りに行く事になった。

墓の場所は燕さんしか知らず、俺と雪乃は燕さんの案内のもと、そこを訪れるわけだが、そこにはもう一人付き添い人が居た。

「雪乃さん、早いよ~」

天馬が膝に手を突いて息を切らす。

その後ろをタバコをふかしながら燕さんが歩いていた。

墓は小高い丘の上で、途中までは車で来れたけれど、残りは徒歩で登らなければならなかった。

雪乃の腕の中にはシンビジウムの花束。

冷たい風が吹いて、開けた視界には海が一望出来た。

雪乃はボンヤリとそこから地平線を眺めている。

庵司が俺を呼びつけたのも…海だったな。

「ねぇ~誰の墓ぁ?もう空気薄くて俺死にそう!」

愚図る天馬の髪を咥えタバコの燕さんが撫でる。

あのクリスマス前夜の日から、燕さんは大人の本気で天馬を落とした。

今となっては天馬の方が燕さんにベッタリだ。

『雪乃…花、飾ろうか』

俺が声を掛けると、風に靡く髪を耳にかけながら振り向いた雪乃があんまりに綺麗で息を飲んだ。

「良い場所だね」

『あぁ…』

花を飾り、手を合わせる雪乃を見ていた。

俺は自分の指に光る指輪を見つめて、庵司に話しかける。

おまえのフリをした鈍色カラスはもう居ない。

もう誰にもならない。

誰色にも姿を変えない。

俺が

雪乃と生きて行くよ。

「見てっ!!圭介さん!夕陽っ」

雪乃の呼ぶ声に地平線を眺める。

側に寄り添って肩を抱いた。

クスクス笑い出す雪乃。

『どうかした?』

「ううん…今はね…辛くないなぁって」

雪乃は沈む夕陽を眺めながら何かを思い出しているようだった。

きっと…

俺の知らない庵司との記憶だろう…。

俺はここまで聞こえるはずのない波音に任せて呟いた。

雪乃  愛してる

END

著者

ninon

オリジナルの小説を書いていきます。 嵐さんの大ファンです。 黄色を愛でる幸せに生きています。 二宮和也Addiction... どうぞよろしくお願いいたします。 尚、このブログ作品はフィクションであり、実在する人物、団体等とは一切関係ございません。

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