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nino

「は、はいっ!」

『くふふ…良い返事だね。元気してる?』

俺は暫く黙ってしまう。

『…元気な訳…ないか…』

ちょっと困ったような声に変わる。

「いや、その…大丈夫…です。相葉さんから、連絡無かったもんだから…厚かましく俺からしちゃいました。ごめんなさい」

『あぁ、それなんだけどね。松潤がちょっと有休消化中でさ。鬼のように忙しくなっちゃって…店終わったら遅い時間だし、朝は一人分多く仕込み作業しなきゃで異常に早いから…連絡したかったんだけど…ごめんね、心配かけて。』

「そ、そうだったんだ…」

『うん……俺と松潤なら大丈夫だよ。アイツ、仕事に私情持ち込まないタイプだから…てか…タイプだったんだけど…ニノは話、出来た?』

「それが…実はまだ勇気出ないまま…俺、酷いこと言ったし…しちゃったし…」

『そっか…勇気居るよね…ニノが…話せるタイミングでいいんじゃないかな…松潤…きっと分かってくれるから』

相葉さんは優しく俺にそう言った。

胸がキュウンと熱くなって、唇を噛む。

「…はい…ちゃんと…話します。」

『うん。…ぁ…今日ね、たまたま智さんのお使いで店を離れてるんだよ。今丁度お昼を食べ終わったところ。』

「そうだったんですね。タイミングが良くてよかった。」

俺がホッと安心すると、相葉さんが何か呟いた。

『……かな?』

「え?…何か言いましたか?」

『あぁ…うん…ニノさえ良かったらなんだけど…今日は直帰だから…その…会えないかな?』

俺は一瞬息を呑んだ。

「会って…くれるんですか?」

『何言ってんの?…また連絡するって言ったじゃん』

「ぁ…はい…」

『あの居酒屋…赤提灯の』

「覚えてます!…行きます!…絶対…行きます」

『くふふ…嬉しい…じゃあ、待ってるね』

簡単な時間を取りつけて、俺と相葉さんは初めて会った居酒屋で会う約束をした。

オフィスに戻った俺がどんな顔をしていたのかは知れない。

ただ、助言をくれた同僚がバンと俺の背中を叩いてから親指をピンと立てた。

つまりはそういう事だ。

PCを打つ指の動きは尋常じゃない程に早かった。

夕方になるのも早かった。

以前ならずっと遅く感じていた待つ時間さえ、色んな感情が渦巻くせいで

随分と早くに感じていたんだと思う。

約束の時間が近づいて、居酒屋の手前まで来てからだ。

怖気付いた…と言うのが早いのか、身軽だった体は重い石でも背負わされた

かのように動かなくなった。

同じ場所を行ったり来たりしてしまう。

背中を丸めた猫背な姿勢のままため息を吐き捨てた瞬間だった。

ポンと肩に温かい手がかかる。

ビクっと革のカバンを抱きしめ肩が縮まる。

ゆっくり振り返ると、

そこには苦笑いにも見える笑顔の相葉さんが立っていた。

著者

ninon

オリジナルの小説を書いていきます。 嵐さんの大ファンです。 黄色を愛でる幸せに生きています。 二宮和也Addiction... どうぞよろしくお願いいたします。 尚、このブログ作品はフィクションであり、実在する人物、団体等とは一切関係ございません。

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