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aiba

智さんのお使いで店を空けていた俺はそのまま直帰して良いという言葉通り、現場から赤提灯が揺れる居酒屋に向かっていた。

松潤の誕生日会がうまくいかなかった日から、何日も経っている。

松潤はあの日の翌日から長い有休消化に入り、俺には短いメールが届いた。

“相葉くん、俺が有休を取って店を空けるのは、ニノの事が原因じゃありません。新しい恋人が出来ました。そいつのわがままで、しばらく北海道に行きます。お土産待っててください。

あと、相葉くんは自分の気持ちを大切に……約束な。“

これはつまり、誰とかは分からないまでも、彼はその新しい恋人と言う名の人と傷心旅行に出たわけで、ニノの事を宜しくと言うことなんだろうと理解した。

あの公園でニノにキスしてしまってから、正直ずっと眠れていない。

気持ちの整理を付けようと考え込むと結局何も手につかなくなった。

ただ、分かるのは…

会いたくて仕方ないって事…。

松潤の穴を埋めるために、俺と智さんは慣れるまで暫くバタついてしまって、その思いを叶えるには時間がかかった。

今日こそはニノに連絡をと思っていた矢先に向こうから連絡を貰えたって流れだ。

日も沈んだ夕暮れ時に赤提灯が揺れるのが見える…と言うより、その手前で行ったり来たりする細身のスーツの男が目に入る。

不安そうに悩ましい表情で、見ているこっちが可哀想に思えてくるほどだ。

俺は静かに歩みを寄せて、彼の肩に手をかけた。

よほど驚いたのか、彼はカバンを胸に引き上げて今にも泣き出しそうな顔でこちらを振り返った。

思わず苦笑いしてしまう。

『だ、大丈夫?』

「あっ!相葉さんっ!!…」

『ハハ…そんな顔しないでよ…驚かせてごめんね…あんまりに思いつめた顔してるから』

「ぁ…そ、そんな…」

『とにかく入ろうか、ね?』

俺は柔らかなニノの黒髪をポンポンと撫でた。

ニノが首を竦めて上目遣いに俺を伺うものだから、少し屈んで彼を覗き込んだ。

一気に耳を赤くするニノが可愛い。

『行くでしょ?それとも、帰っちゃう?』

ニノは鞄を胸に抱いたままフルフルと首を左右に振った。

俺はうんと頷くと、ニノの背中に手をかけて暖簾をくぐった。

著者

ninon

オリジナルの小説を書いていきます。 嵐さんの大ファンです。 黄色を愛でる幸せに生きています。 二宮和也Addiction... どうぞよろしくお願いいたします。 尚、このブログ作品はフィクションであり、実在する人物、団体等とは一切関係ございません。

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