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masaki

「相葉くんっ!…相葉くんっ!」

『えっ?!あっ!はいっ!何ですか?!』

「何ですかじゃないって!ボーっとし過ぎ!」

大学の先輩がハンディターミナルで頭をゴンとぶった。

『ぃって!…す、すいません…』

「何ぃ…またニノ?」

『はぁ…』

俺は叩かれた頭を撫でながら苦笑いした。

他の誰も知らないけれど、この人だけは俺とニノの関係を知っている。

それも俺がバラしたわけでは無くて…。

いつだったかニノがタダ酒を飲みにここへ来た時、しっかり酔い潰れ、介抱する俺にディープキスをした上、ベラベラとセックスしてるだとかなんだとか赤裸々に喋ってしまったのだ。

普段ニノは周りに関係が知れる事を嫌がる。

それを知ってからは俺から他人に関係を明かす事は無くなっていた。

まぁ、あの時のニノの泥酔のおかげでこの人、櫻井翔先輩にだけは色々と相談出来るわけだ。

「お前さぁ…もう別れなぁ~。悪い事言わないからさ。女だったら俺が紹介してやるって!」

先輩は俺がゲイじゃない事を知っている。

特別なのはニノだけ。

店に来る可愛らしい女の子を見たら、心が揺れない訳じゃない。

世間が言う普通っていうカテゴリーの恋愛に落ち着きたい俺もいる。

だけど…

高校生だった俺は、あんなにも心を抉る映像を見たのが初めてで、多分それは、一生忘れる事が出来ないんじゃないかと…

それほど鮮明に覚えてるんだ。

放課後、オレンジ色の夕陽の光に溢れる音楽室。

グランドピアノとは対照的に真っ白な肌のニノが、身体を小さく揺らしながらピアノを弾いていた。

綺麗な旋律で、耳に優しかった。

そのピアノにのせて、ニノは泣きながら歌っていたんだ。

ワンワン泣いていたわけじゃない。

白い頬を流れる涙はキラキラと夕陽に反射して、見た事もないくらい綺麗に見えた。

どうして泣いていたのか分からない。

ただ…ニノはああやって…

いつだって隠れて泣くんだと、俺だけが知っていた。それは、あの頃の俺にとって、最大の秘密だった。

普段はあんなに明るく振る舞っているくせに、ニノの中には闇があって、それが見えているのは、俺だけのようだった。

それが見ていて苦しくて、抱きしめたくて、出来るなら癒したかった。

「どうせまた浮気じゃないのか?」

回想シーンに耽っていた俺をガツンと引き戻すリアルワードにまた苦笑いが溢れてしまう。

『まぁ…その…えっと…はい…』

「いい加減さぁ目、覚ませよ。」

先輩の言葉にボンヤリとニノの笑顔が浮かんだ。

『目なら…覚めてるんっすけどねぇ』

「なら、その目で現実を見ろ!お前さ、顔は良いんだからモテるんだぞ。今度合コン行かないか?」

『先輩、顔はって…でも、すみません…俺はちょっと…』

どうして…

泣いてたの?

何が悲しかったの?

俺じゃ

力になれないの?

先輩からの誘いをやんわり断りながら、俺は聞けずじまいの思いに溜息をついた。

著者

ninon

オリジナルの小説を書いていきます。 嵐さんの大ファンです。 黄色を愛でる幸せに生きています。 二宮和也Addiction... どうぞよろしくお願いいたします。 尚、このブログ作品はフィクションであり、実在する人物、団体等とは一切関係ございません。

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