16

まーくんは、大学が終わった時間になっても戻らない。

ホテルから帰った俺は、ピアノの前に座り、ただボンヤリと昼間のまーくんの顔を思い出していた。

バッチリ目が合ったもんだからいけない。

強張った表情の後…泣いてしまうんじゃないかと思うような顔を作ったまーくん。

きっと俺は、まーくんを沢山傷つけてるんだろうと思う。

ポロンと鍵盤を鳴らすと、携帯が鳴り響いた。

慌ててローテーブルに置いていた携帯に出る。

「もしもしっ!まーくんっ?!」

『ぁ…うん』

「あのさっ!!今日のはねっ!違うくてさ!」

『ニノっ!』

「なっ…何よ…おっきな声出しちゃって」

どうしてだろう…

まーくんに叱られるのなんて、慣れっこの筈なのに…

首を締められてるみたいに空気が薄い。

ドキドキとは違う、ドクンドクンという血の流れを感じた。

血管が破裂しそうな緊張を感じる。

『もう…終わりにしよう』

ゲームオーバーの知らせは、突然やってくる。

いや、これもいつもの事だ…

震える声を抑え切らないまま呟いた。

「なっ…何?…またいつもみたいに…怒ってんの?」

『違うよ…もう…俺ね、そこへは暫く戻らない』

「…ぇ?…何言ってんの?さっきからまーくん変だよ」

『…変じゃないよ…ニノ、その家に住むのも良いし、違う部屋…借りても良いし…少しさ…考えて。』

「まーくん、変な冗談やめなよっ!俺が悪かっ」

『ダメなんだよっ!!!俺じゃっ!!』

「まーくん?」

『ニノをダメにしちゃう…だから…側に居られない』

「は?!何だよっ!意味分かんないんだけどっ!!まーくんっ!」

『とにかくっ!家の事…考えといて欲しい。』

「まーくんっ!まーくんっ!ちょっ!まーくんってばっ!!!」

電話はすでに切れていた。

俺は呆然と脱力して、携帯をフローリングに落としてしまう。

空いた手の拳で鍵盤を叩きつけていた。

バァーンと汚い音が響いて、急に部屋がまーくんの香りを強くした気がした。

そしてどうしてだか、始めて惚れた音楽教師を思い出していた。

“ニノ…お前が居てよかった”

そう言って、俺を救ったくせに…

黙って居なくなった。

居なくなったんだ…

ポタポタ涙が溢れて、鍵盤が濡れていく。

バァン バァンと額を鍵盤に叩きつけて、唇を噛み締めた。

「んだょっ…何でだよっ!!!」

大きな声が、冷え込み始めた秋のハイツに響いて

泣いた。

著者

ninon

オリジナルの小説を書いていきます。 嵐さんの大ファンです。 黄色を愛でる幸せに生きています。 二宮和也Addiction... どうぞよろしくお願いいたします。 尚、このブログ作品はフィクションであり、実在する人物、団体等とは一切関係ございません。

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