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演奏は驚く程無事に終わった。

始まる前のまばらな拍手が嘘のように、大歓声が上がり、ステージから降りた俺を見つけた客達はCDが出ていないのか、なんて言葉までくれた。

俺は持ち前の人たらしを活かして、明日にでもCDを作ってくれそうなおじさんから名刺まで頂いた。

だけど、なんの意味があるんだろう。

まーくんは来ると言った。

だけど来なかった。

それが……答えなんだろうか…。

俺は対バン相手からタバコを一本貰って裏口から外へ出た。

七時…

まーくんは来なかった…

八時でも、営業時間が終わった時間でも良いと俺は言った…。

それなら、まだチャンスはある…。

あるよな…。

狭い軒下で、雨足の強まる空を見上げて紫煙を吐き出した。

もう、雨の音さえ…

聴こえない。

二度目のステージを終えた俺は、恥ずかしいことに、人目も憚らず…

楽屋の中で泣き出してしまった。

変わるがわる仲間が心配して、胃薬だ痛み止めだと俺を病人扱いしてくれた。

途中から、そんな情けない自分がおかしくて笑い出してしまう始末だ。

「はは…全く…思わせぶりな態度とんなよな…馬鹿野郎…ばか…まぁ…くん…」

涙が枯れるようになった頃には、客は居なかった。

残っていたのは二人程度のスタッフ。いよいよ営業時間外にまで振られた事になる。

「ニノ…大丈夫か?」

いつまでも楽屋でうずくまる俺に、心配そうに声がかかる。

「大丈夫…遅くまで居座ってごめん…俺、帰るわ」

「おぉ、じゃまたな」

「うん、また!」

きっと気づかれていたに違いない。

俺の態度は、明らかに誰かを待っていたと。

今頃スタッフ同士で話してる。

アイツは誰を待ってたんだろう?

そうだな…俺は…誰を

待ってたんだろう…。

著者

ninon

オリジナルの小説を書いていきます。 嵐さんの大ファンです。 黄色を愛でる幸せに生きています。 二宮和也Addiction... どうぞよろしくお願いいたします。 尚、このブログ作品はフィクションであり、実在する人物、団体等とは一切関係ございません。

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